岐阜県で昨年9月に発生した豚コレラが滋賀など5府県に拡大した。近江八幡市の養豚場では約700頭が処分された。

 感染がさらに広がれば畜産業に甚大な被害をもたらしかねない。農林水産省や県、各農家は危機感を強く持ち、防疫措置や衛生管理の徹底に万全を尽くしてもらいたい。

 豚コレラは豚やイノシシ特有の家畜伝染病で致死率が高い。人にはうつらず、感染した肉を食べても影響はない。国内での感染例は1992年以来だ。

 岐阜での発生後、関係機関による封じ込めに失敗し、広範囲に拡散する事態になったのは残念だ。なぜ感染の連鎖が防げなかったのか十分に検証する必要がある。

 主な感染源とされるのは野生のイノシシだ。ウイルスの型は海外で検出されているのと同じで、感染した豚肉が国内に持ち込まれ、その残飯などを食べたイノシシを介して養豚場に広まったとみられている。

 豚コレラが多発した岐阜の養豚場では豚舎の専用衣服や靴を着用しないなど、施設の衛生管理が徹底されていなかった。野生生物との接触遮断や用具の消毒も不十分だったという。

 また、早期通報や検査の遅れなど関係者の初動対応も問題視されている。国は6日になって現地対策本部を設置したが、対策が後手に回った感は否めない。

 感染が連鎖した背景には愛知、岐阜の養豚場が飼育用の子豚を各地に出荷する「繁殖農家」だったことがある。感染が相次いでいただけに農場間の流通には特に慎重を期すべきではなかったか。

 看過できないのは子豚に食欲不振などが確認され、感染の疑いがあったにもかかわらず、愛知の農家が長野へ出荷していたことだ。経緯をきちんと解明すべきだ。

 豚コレラはワクチンで予防できるため発生場所の養豚業者からは待望論もある。ただ使用すればウイルスを完全に排除した国とはみなされず、政府は豚肉全般の輸出に悪影響が及ぶとして否定的な姿勢を変えていない。農水省は衛生管理徹底による終息を目指すが、業者からは不安の声が収まらない。今後、議論になる可能性もある。

 さらに心配なのは、より致死率が高く、対策が困難なアフリカ豚コレラの上陸だ。中国で猛威をふるっており、日本の空港でも中国の旅行客が持ち込もうとした食品からのウイルス検出事例がある。水際の防疫など警戒を一層強化しなければならない。