日々、新型コロナウイルスの新規感染者について発表する滋賀県の記者会見(大津市京町4丁目・県危機管理センター)

日々、新型コロナウイルスの新規感染者について発表する滋賀県の記者会見(大津市京町4丁目・県危機管理センター)

 滋賀県は8月初旬、客と従業員の新型コロナウイルス感染が判明したガールズバーについて、感染症法に基づき初の店名公表に踏み切った。これまで県はクラスター(感染者集団)が発生した店舗・施設名の公表にも慎重だったが、今回は店名を知った客が自ら申し出て検査を受けるなど、感染抑止に一定程度つながった。ただ、行政による公表は懲罰的な印象を地域社会に与え、事業者に打撃となりかねない。県の公表方針の丁寧な説明と事後の適切なフォローが求められる。

 県は2日、湖南市と長浜市に店舗を持つガールズバーの店名と感染の可能性のある期間を公表。数十人の客から連絡があり、検査で4人の陽性を確認した。両店関連の感染者は計9人で8日以降は確認されておらず、店の同意を得て公表に踏み切った県の担当者は「店の協力のおかげで早期に収束できた」と話す。

 ただ、県内の感染状況を取材してきて、この公表にはやや唐突な印象を持った。県はそれまで店舗・施設が自ら公表した内容を追認したり、ほぼ同時に公表したりしたことはあっても、主体的に発表したことはなかったからだ。

 4月には休業要請に応じないパチンコ店を公表する都道府県が相次いだが、滋賀県への情報公開請求で入手した当時の庁内協議の議事録をたどると、知事出席のもと少なくとも6回話し合われ、入念に対応を検討した上で、公表には至らなかったことが分かる。4月に従業員のクラスターが発生した県内の歯科医院についても、患者との接触はカルテからたどれるとして公表を見送っている。

 感染症法は国や都道府県に対し、個人情報保護に留意した上で、感染予防のため積極的に情報を公表しなければならないと定める。政府は7月末、クラスターなどが発生し、感染経路の追跡が困難な場合には店名を公表するとの方針を改めて示し、「関係者の同意は必要ではない」と自治体に通知した。

 滋賀県も県内市町、経済団体に連絡しており、ガールズバーの件では政府方針に沿って対応した。ただ県は、同意なしの公表は現時点では考えていないという。「店と協力してクラスターの封じ込めを進めるため」だが、県はこうした考えを事業者らに十分説明しておらず、「いきなり公表されるのでは」(ある飲食店関係者)との不安の声が街では少なくない。

 無料通信アプリLINE(ライン)を使った県の接触可能性通知システム「もしサポ滋賀」や来店者名簿などで客の連絡先が分かれば、そもそも店名公表の対象にならないが、これも事業者に周知されているだろうか。公表を恐れるあまり事業者が萎縮すれば、地域の経済活動全体が低下しかねない。

 県には、事業者の不安を和らげることはもちろん、店名公表後の感染状況や店舗が講じた改善策を広く県民に説明するといったことも必要ではないか。感染防止策を取らない店舗・施設には毅然(きぜん)とした対処が必要だが、過剰なダメージや周囲からの誹謗(ひぼう)中傷を事業者が受けないよう、目配りの利いた対応を求めたい。