神はモーリシャスを最初につくり、それをまねて天国をつくった―。「トム・ソーヤーの冒険」で有名な米国人作家マーク・トウェインは、そんな言葉でインド洋に浮かぶサンゴ礁が美しい島国を表現した▼観光や漁業に頼るモーリシャスが「環境非常事態宣言」を発令する事態に直面している。沖合で先月末、日本の貨物船「WAKASHIO」が座礁し、その後に船体は真っ二つに断裂。燃料タンクの重油約千トンが流出したからだ▼いつもなら観光客がダイビングを楽しむ透明な海に黒い油の帯が漂い、異臭を放つ。マングローブ林や砂浜にも付着し、サンゴなど貴重な海洋生物への影響も案じられる▼こうした報道に、1997年1月に日本海で起きた悪夢が重なる。高波を受けたロシアのタンカー「ナホトカ」が大破して重油が流れ出し、京都など1府8県に甚大な被害を及ぼした▼あの時と同様に地元の人らが手作業で油をかき集め、被害の食い止めに懸命だ。ただコロナ対策もあり支援の専門家チームや機材、ボランティアを十分に手当てできず、サトウキビの葉などに吸着させているという▼効率の悪さを例えて「貝殻で海を干す」とも言うが、まさにそれ。暮らしを支える海の危機にいら立ちはいかばかりか。日本の責任は重い。支援を急ぎたい。