イラスト・冨田望由

イラスト・冨田望由

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 動物は自分の存在を認識しているのでしょうか? この問いに答えるためによく使われる方法がミラーテスト。鏡に映る姿を自分と思うかどうか確かめます。

 多くの動物は、鏡の中の自分を敵だと思って威嚇したりしますが、中にはそのうち攻撃をやめる種類がいます。ですがこれだけでは「見えているのは自分」と思ったのか、「そこの誰かは友好的」と思ったのか区別できません。そこで一工夫。麻酔をかけるなどして、動物の目からは見えないような、人間で例えれば眉間や頰のようなところに気づかれないように印をつけ、もう一度鏡を見せます。もし、自分と思っているのであれば、何か顔についていることに気がついて、そこを触ろうとするでしょう。

 このテストに合格した動物はそれほど多くなく、確かなのはイルカ、オランウータン、ゾウなど何種かの哺乳類と、鳥ではカササギくらいです。賢い鳥として有名なカレドニアガラスやヨウムでさえ失敗しています。

 そんな難しい課題を、ホンソメワケベラがクリアしたことが、大阪市立大の幸田正典教授らによって報告されました。ホンソメワケベラは魚なので、喉の下側につけられた印を触る指も鼻もくちばしも持っていないのですが、鏡に映る自分に印があるのを見て、水槽の底に喉をこすりつけて取ろうとしたとのことです。

 ミラーテストは完全ではなく、視覚に頼らない動物や体の汚れを気にしない動物ではうまくいきません。例えば私は寝癖で爆発した頭で出掛けようとして家族に注意される人です。ミラーテストに合格する自信はありません。でも、私は自分のなんたるかはもちろんわかっているつもりです。ということで、自分を認識している動物は実は他にもたくさんいるかもしれません。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。