夏がとても苦手だ。雪がよく降る街で育ったこともあって、暑さにはとことん弱いし、なにより日差しがとても苦手なのだ。

 夏の映画や小説で好きなものもたくさんあるけれど、太陽や海というような記号的なものじゃなくて、じとっとした夜の暑さとか、終わりと始まりの間の季節(海外における夏休みは日本にとっての春休みのようなもの)としての夏を描いたものが多い。なにより冬の寂しさや季節の変わり目だけが持つ、無邪気な予感の匂いにはどうしたってかなわない。海だって冬のほうがお似合いだ。

 ぼくはとにかく何より日差しが苦手だ。理由はふたつあって、肌が弱いことと目が光に強くないことだ。少しでも日焼けしてしまうとその箇所は冬にはシミになってしまうし、炎天下を歩いているだけで目が痛くなってしまう。

 ところが最近になって、四つしかない季節のひとつを好きになれないのはちょっともったいないんじゃないか、と思うようになった。とはいえ、今年は海や山に繰り出せるような状況ではないし、とにかく暑い。出かけるといっても近所のスーパーやちょっと遠出して自転車で本屋さんに行くぐらいなものだ。じゃあ、その時間を少しでも好きになろう。僕はどうにかして夏を好きになるのだ。