版画「もうたくさんだ」 儀間比呂志 1979年ごろ

<ミュージアムのちから コロナ禍に考える>

 立命館大学国際平和ミュージアム(京都市北区)の学芸員兼清順子さんは、台湾・台北市で開かれた「台北ビエンナーレ2018」で現代美術の作品に強い印象を受けた。

 作品名は「The Diary of Lu Ji―Ying」(Lu Ji―Ying、1933~2004)。1人の台湾人が1933年から書き続けた日記が壁一面に貼ってあった。最初は日本語、途中で中国語に変わる。日本語の部分は、台湾が日本統治下にあった期間だ。「すごい衝撃だった」

 兼清さんはこうした視点が必要ではないかと考える。国際平和ミュージアムは戦争の歴史を伝え、現代を取り巻く暴力も紹介する。誰もが戦争を良くないことだととらえ、平和を願う。だが、そこにとどまらず、惨禍に至った理由を考え、同じ問題が再び起きていないかを見極めることが必要ではないか。

 兼清さんは、ベトナム戦争に従軍したカメラマン石川文洋さんの言葉が忘れられない。吹き飛ばされた兵士の体など生々しい写真を展示し、「戦争は肉体を破壊するものだと伝えたい」と明快に語った。

 近年の平和教育で、悲惨な写真や記録を見せるのは逆効果だという考え方がある。だが、兼清さんは「少なくとも選挙権を持ち、政治に参加する権利のある大学生には見せなくては」と考える。国家が関わる悲劇の実相を避けて通ってはいけないと石川さんに教えられたからだ。

 伝え方は多様だ。例えば、沖縄出身の版画家儀間比呂志さんは沖縄戦を描く。亡くなった人の山、住民を殺す日本兵。その場にいた人がどう感じたかまでが作品に表現されている。

 紙芝居「宣戦」は舞鶴市の郵便局に勤めていた人が保管していた。大政翼賛会宣伝部制作のプロパガンダ作品だ。太平洋戦争の開戦を賛美する当時の日本の浅はかさを語る。

紙芝居「宣戦」 1942年12月8日発行 大政翼賛会宣伝部(作・発行)、日本写真技術家連盟(構成)

 平和をテーマとする博物館は戦争体験を伝えることが大きな役割だった。しかし「状況次第で私たちも加害者になり得る。私たち自身の今後の選択を、現代の生き方に即して問いかけたい」。そのためには、台湾で見た現代美術のようにジャンルにとらわれない展示も必要だと兼清さんは模索を続ける。

 

 立命館大学国際平和ミュージアム 設立の核は平和と民主主義という立命館大の教学理念、そして、毎年夏に開催してきた「平和のための京都の戦争展」に向けて市民が集めた資料の二つだ。戦争展は原爆、沖縄戦、京都の建物疎開といった戦時中のテーマに加え、米軍普天間飛行場移設など現代の問題も紹介してきた。学生スタッフも案内や資料整理を通じて「何をどう伝えるか」を学び、問題意識を深めていくという。京都市北区等持院北町。075(465)8151。