天橋立で廻旋橋の架かる文珠水道を水しぶきを上げながら走る水上バイク(7月18日、京都府宮津市文珠)

天橋立で廻旋橋の架かる文珠水道を水しぶきを上げながら走る水上バイク(7月18日、京都府宮津市文珠)

 京都府宮津市の名勝・天橋立に架かる廻旋橋下の水路を無謀な運転の水上バイクが往来している-。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」のLINEに声が届いた。天橋立周辺では住民や観光事業者から騒音や波しぶきに関する苦情が相次ぎ、船を運航する事業者や漁師らも安全面を懸念する。これを受けて京都府や市などが今夏、自主ルールを定めたが、法的拘束力はなく効果は未知数だ。

■波穏やかで走行しやすく、目立てる?

 遠くから聞こえるエンジン音は、次第に「爆音」に変わる。水路のカーブから緑、オレンジ色のカラフルな水上バイクが現れた。

 7月下旬の休日、天橋立の廻旋橋下を流れる「文珠水道」。橋を行き交う大勢の観光客が驚いて目を向けると、バイクは水しぶきを上げながら足もとを疾走、水面に大きな波が残った。

 文珠水道は天橋立の南側を通り、宮津湾と阿蘇海をつなぐ。観光船やニッケル工場への運搬船、漁船などさまざまな船の通航路であり、水路南側には旅館や飲食店の建物が並ぶ。

 「騒音と水しぶきに30年悩まされてきた。本当に迷惑している」。水路沿いの旅館の経営者はうんざりとした様子でこう話す。

 休日や観光シーズンは昼夜を問わず、エンジンの爆音が響く。高速走行による波や水しぶきが敷地内に入ってくることもあったという。「『静かな場所だと聞いて来たのに残念』という宿泊客もいる。閑静な観光地にはふさわしくない」と憤りは収まらない。

 宮津湾で操業する漁師福井寿夫さん(71)も「バイクはどこでどう動くか分からない。高速で近くを通られると怖い」と漏らす。

 水上バイクは全長3~4メートルで、2、3人乗り。最高時速は80キロにもなり、運転するには、特殊小型船舶操縦士の免許が必要だ。

 なぜ、多くのバイクが文珠水道を走るのか。

 宮津市にあるマリーナの責任者で、自らも水上バイクなどプレジャーボートを操縦する男性(36)によると、文珠水道は波が穏やかで走行しやすい上、操縦士も廻旋橋や智恩寺などの名所を走行しながら楽しめる。また、周辺を散策する観光客も多いためより目立つといい、「絶好のスポットなのではないか」と推測する。

 マリンスポーツとしても人気の水上バイクだが、事故も多い。海上保安庁によると、昨年までの3年間で全国で219件発生。文珠水道では2018年7月、水上バイクが観光船と衝突する事故があった。今年も府北部では、8月19日時点で水上バイクによる人身事故が4件あり、ロープに巻き込まれて腕を切断する事故も起きている。