江州伊吹山の麓で露草を食らう四六(しろく)のがまを、上下四方が鏡張りの囲いに追い込む。ろうそくを1本ともせば、がまは鏡に映るおのれの姿に驚き、たら~りたらりと脂汗を流す。煮詰めた薬が「がまの油」だ▼ご用とお急ぎのない方は聞いてらっしゃい。抜けば玉散る氷のやいばが止まり、切り傷が治る。立て板に水の口上で、侍がこれを売り切ってしまう。上方落語でおなじみの立ち売りである▼海藻のミネラルなどから成るのは、ポビドンヨード。これを含むうがい薬は殺菌力が強く、細菌やウイルスにも効くとされる。大阪府の吉村洋文知事は会見で各社の製品を並べ、「うそみたいなホントの話をする」と切り出し、推奨した▼新型コロナウイルスの検査で、使った人は使わない人より陰性の多い傾向があったという。口内のウイルスを減らし、飛び散る唾液による感染が止まるとの口上だ▼証拠が足りず、科学的でないと医療関係者に批判された。使いすぎもよくないらしい。コロナ禍でわらをもすがる気持ちは分かるが、勇み足ともいえよう▼世論の鏡で前のめりを確かめ、油を絞られ、証拠を煮詰めた方がよい。本紙には、うがい薬の棚はガラガラとする投稿があった。極端な品薄である。ご用とお急ぎのあまりない方は、口上を聞くだけにしよう。