あかまつ・たまめ 1959年生まれ。画家。障害を持つ人々のアート活動を支援。イタリアでの創作などを経て93年に京都市立芸術大教員。美術学部長を経て2019年4月から理事長兼学長。

 新型コロナウイルス感染が世界中に広がった今年の3月、ドイツのモニカ・グリュッタース文化相が文化芸術への支援を発表する際、「芸術家は、特に今のような状況では、必要不可欠で重要な存在」と発言した。「創造的活動で時代を切り開く勇気が、この危機的状況を乗り越える助けになる」と。特に芸術を志す世界中の若者たちの胸に響いたことと思う。

 行動や生活に制限があっても、芸術を生む想像力や創造力は無限に自由であり、むしろ不自由な状況下の社会を支える大きな力になるはずである。現在のように不自由や抑圧があっても、そこにしか生まれえない豊かな精神の活動があるはずだ。

 人々の心に訴える芸術や、新しい価値観を生み出す研究が、どのような状況下でも歩みを止めることのないよう芸術系大学は、創造力、表現力、探求力に秀でた学生たちを、コロナ後の新しい時代を築く大切な人材として育てていかねばならない。

 この未曽有の事態となった2020年、京都市立芸術大は、創立140周年を迎えた。思えば祖となる京都府画学校が創立された頃も、逆境の最中だった。幕末からの戦災や遷都により、京都にとって前例のない厳しい状況の中、当時の若い画家たちが、自分たちの手で画壇や産業に資する人材育成の体制を企図することで、復興への道を模索した。それは、パンデミックの厳しい状況の中、未来につながる芸術大学のあり方を求めて、奮闘している現在の姿に重なる。

 この春、健康と安全が最優先事項となり、実技を中心にする本学でもオンラインで実施している「遠隔授業」が、学生、教員双方に不自由をもたらした。実技についてはもちろんのこと、キャンパスでの自由で横断的なつながりは大学のもたらす豊かさの一つであり、今後は「対面」と「遠隔」のそれぞれを生かす京都芸大らしい組み合わせを教職員と学生が一緒に探っていく。

 本学は、2023年度に予定しているJR京都駅の東部へのキャンパス全面移転を、さらなる飛躍のきっかけにしたいと考え「テラス構想」を掲げている。テラスとは、外に向かって開かれ、多様な人々が往来できる場である。創造的な交差・交流を「芸術」をエンジンとして活発におこなうことを目指している。

 新型コロナウイルスは、人々の交差・交流を脅かすが、現在のような忍耐の時に、アートの必要性を信じて前に進み、コロナとともに生きる時代の、さらに魅力ある「テラスのような大学」作りに挑戦し、社会とともにこの危機的状況を乗り越えたい。(京都市立芸術大学長)