米民主党の大統領候補にジョー・バイデン氏が指名された。

 オバマ政権で副大統領を務めた中道穏健派のリーダーで、実直な人柄が支持者の心をとらえた。

 共和党のトランプ現政権は「米国第一」を掲げて国際社会との摩擦を生み、国内では人種問題などで分断を加速させている。

 現政権を倒し、新しい米国像を示すことができるのか。バイデン氏の動向に注目が集まっている。

 活発な論戦を通じて米国社会や世界的な課題を浮かび上がらせ、解決への道筋を示してほしい。

 意気込みは、事実上の公約となる党綱領にも表れている。

 国内問題では、富裕層減税の撤回と法人税の引き上げ、移民への差別的な入国規制撤廃-など、格差の是正や少数派を尊重する姿勢を示した。

 国際社会に向けては、トランプ外交で「米国の国際的な影響力や評価はぼろぼろになった」との認識も表明し、トランプ氏が一方的に離脱を決めた温暖化防止枠組みのパリ協定や世界保健機関(WHO)への復帰や、イラン核合意の履行再開を明言した。国際協調の重視を鮮明にしたといえる。

 トランプ政権からの全面的な政策転換だ。現政権に批判的な有権者には強いアピールとなろう。

 白人警官による黒人男性暴行死事件に象徴される人種間の対立融和も選挙の争点に浮上している。

 副大統領候補に黒人女性カマラ・ハリス氏を選んだのも、この問題に取り組む姿勢を強調する意味合いがあるのだろう。当選すれば78歳と米史上最高齢での大統領就任となるバイデン氏を行動力でカバーすることも期待されている。

 ただ、トランプ氏の支持基盤は底堅いとされ、40%前後の「岩盤支持層」を維持している。一時は優位にあったバイデン氏の支持率との差も徐々に縮まっている。

 コロナ禍で失業者が増える中、トランプ氏の経済政策に期待する向きがあることは確かだ。困窮している層に救いの手を差し伸べ、社会の分断を修復する道を示せるかどうかがバイデン氏の選挙戦略の鍵を握ることになろう。

 民主党内の亀裂の深さも懸念材料だ。中道穏健派とプログレッシブ(進歩派)が勢力を二分しており、両派が妥協してできた党綱領にも批判の声があるという。

 超大国・米国の大統領選結果は世界の行方を左右する。受けて立つトランプ氏も自国第一主義にとらわれすぎず、広い視野で政策を深化させ、勝負に臨んでほしい。