「リレーは足から、100メートルは体から前に出ているように見えた…」。国内屈指のスプリンターだった朝原宣治さんは現役時代、競技に詳しくない同僚の感想にじっと耳を傾けた▼専門外の人の的外れに思える直感も、朝原さんは貴重なヒントだと考えたのだろう。専属コーチは付けず、自ら考えて工夫するスタイルだった。「自分の体で実験を繰り返しているようなもの」と模索を続けた▼関西スポーツ賞の表彰式が先日行われ、高校野球の大阪桐蔭ナインや柔道の阿部詩選手ら華やかな顔が集った。記者が声を掛け、即席の対談が会場のあちこちで行われるのが恒例だ▼ボクシング世界王座の防衛を続ける拳四朗選手は女子マラソンで東京五輪を狙う松田瑞生選手と対面した。なぜか減量がテーマになり、互いに試合前は動画投稿サイトで「他人が食べている映像を見る」と盛り上がった▼話題は気分転換の方法や練習内容に移り「五輪で金メダル取ってください」「試合見に行きます」とエール交換。10分ほどの交流だったが、世界で闘う選手同士、意気投合したようだ▼分野を問わず、長く活躍するには技量に加え感性の鋭さが問われる。他人から受けた刺激をどう自分の力に転換するか。強さだけでなく、柔軟な姿勢もアスリートには欠かせない素養だ。