コロナ禍の折、過酷な環境で働く人たちにお菓子やマスクが届けられたというニュースがささくれがちな心を和ませてくれた。感謝の気持ちを伝え、親愛の情を形にする。贈り物は相手に思いを伝える手法の一つだ▼ただ、人が物に託す思いは善意ばかりとは限らない。届いた品が、実はなにがしかの見返りを求める貢ぎ物であったり、相手をだます道具だったりということもある▼植物らしき「謎の種」が自宅に届いたとの相談が、国民生活センターなどに相次いでいる。送り元は中国で、封筒の中に種子を詰めた袋が入っていたという▼専門家は「ブラッシング詐欺」の可能性を指摘する。種子を送りつけた業者が受取人を装ってネット上で高評価を付け、出品者としての信用を自ら高める手口だ。コストをかけず不特定多数に送りつけるには、種子が最適だったとみる▼もしそうなら受取人が代金を請求されることはないが、どこで名前や住所を知られたのか、不気味だ。評価次第で売り上げが大きく変わるネット時代の新たな手口になるかもしれない▼クリック一つで贈り物を届けてもらえる便利な社会になった。だが、宅配先で送り主の思いまでは伝えてくれまい。心づくしの言葉は手紙で添えたい。これは善意なのかと相手を悩ます種とならぬように。