インド洋の島国モーリシャス沖で、日本の貨物船が座礁して燃料の重油が大量に流出した。

 マングローブ林や砂浜に油が漂着し、モーリシャス政府は多様な野生生物が被害を受け、危機的な状況にあるとして「環境緊急事態」を宣言した。

 世界的にも貴重な生態系とともに、美しいサンゴ礁を魅力とした主要産業の観光への打撃も懸念されている。

 重油流出が始まって約2週間。海面に浮かぶ油や船内の残りの回収はほぼ終えたとされるが、現地では沿岸一帯に付着した油を取り除く懸命な作業が続いている。

 海洋汚染がこれ以上広がるのを食い止めることが急務である。船主ら関係者が責任を果たすとともに、日本政府も環境回復に向けて力を尽くすべきだ。

 貨物船は長鋪(ながしき)汽船(岡山県)所有で、商船三井がチャーターし、中国からブラジルへ向かう途中だった。座礁後に荒波で二つに割れ、重油千トン以上が漏れ出た。

 船の引き揚げ業者や現地当局の見通しの甘さに加え、新型コロナウイルス対策で要員や機材の到着が遅れた影響が指摘されている。

 座礁時は、Wi-Fi(ワイファイ)接続のため島近くを航行していた、と複数の乗組員が証言しているという。詳しい原因究明と対応策の検証が欠かせない。

 沿岸での油の除去作業は、サンゴ礁を傷める懸念から油処理剤が使えず、人海戦術に頼らざるをえないため難航している。

 同国と関係が深いフランスやインドは積極的に専門家や機材を送って支援している。日本は第1、2陣とも数人規模の援助隊派遣にとどまり、立ち遅れは否めない。

 現地当局からは、日本の環境技術や専門家らの協力拡大が要請されている。大学の研究や企業の技術・ノウハウも生かしたい。

 美しい海に戻そうと、大勢の住民らが手作業で油を回収する姿は、1997年のナホトカ号事故と重なる。重油約6千トンが日本海沿岸9府県に漂着し、京都だけでも延べ7万8千人の作業で回収に約5カ月を要した。

 油の流出事故は、清掃費用に加えて漁業、観光面などの損害も甚大だ。船の保有会社が保険をかけて賠償をするのが原則だが、国際条約によって上限があり、今回の損害を全て補償するのは難しいとの見方がある。

 賠償額の不足は、地域経済や環境被害の回復の遅れを招きかねない。国際海運の恩恵を踏まえ、企業・団体の積立金で補償する新制度の検討が必要ではないか。