新型コロナウイルス感染症が医療機関の経営に深刻な打撃を与えている。

 5月に全国の医療機関で受診した患者数は前年同月から20・9%減ったことが厚生労働省のまとめで分かった。感染を警戒し、受診控えが広がっていた実態が鮮明になった。

 政府の緊急事態宣言が影響したとみられる。小児科と耳鼻咽喉科の落ち込みが顕著で、小児科の減少幅は46・1%とほぼ半減した。

 耳鼻咽喉科も子どもの患者が多く、ともに保護者が受診を控えさせた背景があるようだ。

 コロナの感染は一度収まったように見えたが、夏以降に再び拡大している。感染者数は「第2波」の様相を見せており、死者の増加も目立ち始めた。

 事態は長期化しており、受診控えの傾向は当分続くとみられる。医療機関へのさらなる支援拡充が必要ではないか。

 患者数の減少は不要不急の受診を控えたといった側面もあるかもしれない。だが、過度な受診控えは症状悪化につながりかねず、患者にとってリスクが大きいことは言うまでもない。

 受診控えは日常的に医療を必要とする人にも広がった。糖尿病の医師と患者でつくる委員会の6月の調査では、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の患者の2割が通院を自粛していたことが分かった。

 コロナの影響で手術の延期も相次いだ。大規模病院ではさらに、症状の重い感染者を受け入れる集中治療室(ICU)のベッドを一定数確保したり、院内感染防止のために病床数を減らしたりして収益が圧迫された。

 日本病院会や全日本病院協会、日本医療法人協会がまとめた全国の病院経営状況(4月)によると、調査した1203病院の66・7%が赤字となった。

 特に患者にとって身近なかかりつけ医である地域の小さな診療所が深刻だ。既に閉院に追い込まれたところもあるといい、大病院に患者が集中して感染拡大に対応できなくなるといった事態も予想される。

 地域医療へのしわ寄せは避けなくてはならない。

 医療機関への支援を巡り、政府はこれまでに新型コロナの重症患者の入院料について診療報酬を3倍にしたほか、病院内の消毒にかかる経費の補助などを決めている。

 ただ、6月に成立した第2次補正予算で都道府県向けの「緊急包括支援交付金」を2兆円規模で拡充したが、支給手続きが遅々として進まず、使い勝手の悪さも指摘されている。

 支援策はコロナ患者を受け入れる大病院に手厚く、町の小さな診療所には届きにくいとの声もある。経営悪化に歯止めがかかるかどうかは不透明だ。

 全国知事会は交付金を増額して、都道府県の判断で経営が苦しい医療機関の運営費支援などに幅広く活用できるよう見直しを求めている。

 秋冬には、さらなる感染拡大も予想される。感染症対応と通常の診療を両立させるため、病院支援策の改善と拡充は待ったなしだ。政府は現場の実態を踏まえ、思い切った対策を打ち出してほしい。