現在の西武大津店。地域のランドマークとして長年親しまれた

現在の西武大津店。地域のランドマークとして長年親しまれた

比叡山を望む京都信用金庫の修学院支店(京信提供)

比叡山を望む京都信用金庫の修学院支店(京信提供)

 戦後日本の建築史を彩った建築家菊竹清訓(1928~2011年)の佳作が各地で姿を消しつつある。滋賀県では8月末で営業を終える西武大津店(大津市)が解体後にマンションになる見通しで、近代建築に詳しい専門家からは惜しむ声が上がる。調べてみると、菊竹建築と京都府の意外な接点も見えてきた-。

 西武大津店は、西武グループ発祥の地である滋賀で初の百貨店として76年に開業した。段丘状に突き出た屋外テラスと、建物の左右に配された階段の造形美が目を引く。運営するそごう・西武(東京)の担当者は西武百貨店を中核として70~80年代、新たな生活様式を発信し一時代を築いた西武の「セゾン文化」を引き合いに出し、「建築分野で当時活躍されていた方を起用したのではないか」と推測する。

 大津店は経営不振から8月いっぱいで44年の歴史に幕を下ろす。土地・建物を取得したゼネコン大手の長谷工コーポレーション(東京)は閉店後に取り壊し、跡地にマンションを建てる計画だ。

■信金63店舗を設計、開放的な内装と傘状の屋根

 一方、菊竹氏は71~93年、京都信用金庫の本店をはじめ京滋を中心に計63店舗の支店群を手掛けた。その背景には、京信の理事長だった故榊田喜四夫氏が京都の文化人らに呼び掛けて設立した民間シンクタンクのシィー・ディー・アイ(CDI、京都市中京区)の存在がある。

 CDIは、地域に根ざしながら経済成長だけでなく文化振興にも寄与する金融機関を目指した榊田氏が掲げた「コミュニティ・バンク論」の具現化に向け、京信の店舗づくりや行員の制服、通帳などのデザイン業務全般を一手に受託。CDI所長を務めた建築評論家の故川添登氏を通じて菊竹氏に設計を依頼した。

 中でも代表格として知られる修学院支店(左京区)は、壁や間仕切りのない開放的な内装と傘状の屋根が特徴。京信によると、街並みにとけ込む支店群は93年までに60超を数えたが、近年は店舗の老朽化や再編などから解体されたものも20に上るという。