会えない時間が思いを募らせるのだろうか。今週末のNHK大河ドラマの再開を前に、明智光秀ゆかりの福知山城がにぎわっている。中でも、愛好家の目を奪うのが石垣だ▼一見、ばらばらな石が乱雑に積まれているが、その中に五輪塔や石仏などがまざる。「転用石」と呼ばれ、500個以上ある。一説には地元の旧勢力や権威の否定ともされ、新たな世を築く、光秀自身の心の内を表すとか▼進取の気性は文書(もんじょ)にも残る。御霊神社(福知山市)所蔵の「明智光秀家中軍法」である。家臣一人ひとりの石高に合わせ、合戦で準備する兵員や武器を定めた▼例えば、100石では兵を6人出し、500石から600石は甲(かぶと)をかぶった者2人に加え、鑓(やり)5本、鉄砲2挺(ちょう)…。城郭考古学者の千田嘉博さんは、家臣の働き過ぎを抑えて過剰動員で地域を疲弊させない、光秀による「働き方改革」とみる▼翻って現代。新型コロナ対策を機にテレワークなど働き方の多様化、オンライン化が進む。だが収入が減ったり、職を失った人も多い。改革は生活が成り立ってこそではないか▼「逆臣」の武将は、福知山では家臣・領民思いの人柄が伝わる。地子銭(じしせん)(宅地税)を免除した伝承もある。光秀像にあやかるなら、互いにいたわり合って歩むしかない。時代に試されている。