新型コロナウイルス感染症のワクチンが実用化された場合、高齢者や持病のある人、医療従事者を優先して接種すべきとする提言を政府の対策分科会がまとめた。

 重症化するリスクの高い人や医療体制の維持への対応を先行させることは、命を守る観点から妥当な考え方といえよう。

 世界の感染者が2300万人を超え、日本国内も再流行して収束が見通せない中、ワクチンによる防疫への期待は高まっている。早期の実用化に向けて国際的な競争となっているが、有効性や安全性が未知数なのは否めない。

 ワクチンがどれだけ感染被害を抑えることができるのか。十分な情報提供を前提に、国民の共通理解を図っていくべきだろう。

 世界保健機関(WHO)によると、ワクチン開発計画は169に上る。うち30は人に投与する臨床試験(治験)段階にある。日本政府は、欧米の製薬大手2社から供給を受ける基本合意を結び、年明けからの接種を視野に入れる。

 当面、全国民に行き渡る量は確保しにくい見通しだ。事前に優先順など国の接種方針を定めておくことは、医療機関、保健所など現場での混乱や国民の間の不公平感を招かないために重要だろう。

 ただ、実現間近とされるワクチンには、実用化された例のない「核酸ワクチン」などの新しい技術が使われている。発症や重症化を防ぐ効果や免疫の持続期間は明らかでなく、副作用が高い頻度で報告された例もある。

 「過度な期待は禁物」と専門家は警告している。安全性の担保をおろそかにして前のめりに活用を急ぐのは慎まねばならない。

 接種の進め方を考える土台となるのが、2009年の新型インフルエンザ流行時の対応方針だ。医療従事者や公務員、インフラ企業など社会機能の維持に必要な人員を優先する「特定接種」の制度を設け、他に重症化リスクの高い妊婦や持病を持つ人を優先するとした。

 今回も基本的な考え方は踏襲される方向だ。妊婦や子どもらへの副作用などの影響を慎重に見極める必要があるだろう。

 09年に接種順を政府内だけでなく、専門家や重症化しやすい患者団体を交えて公開の場で議論したのを見習うべきだ。ワクチンの効果と限界、リスクを国民が深く理解するのにつながったとされる。

 単なるワクチン頼みでなく、「3密」回避など基本的な感染対策と併用することが欠かせない。