9月6日まで開催の「飄々(ひょうひょう)表具─杉本博司の表具表現世界」では、現代美術作品と古美術との洗練された調和が楽しめる

<ミュージアムのちから コロナ禍に考える>

 細見美術館(京都市左京区)の展示室は1階から地下2階へと降りる構造だ。1階は広い空間に展覧会を象徴する作品を展示して全体のテーマを伝える。展示が進むにつれて鑑賞者は地底探検のように下へと向かい、秘められた場所への期待が高まる。展示室間の移動はいったん外に出る。緊張が和らぎ、気持ちがリフレッシュされる。

 地下2階はこぢんまりした部屋で小さめのガラスから作品をのぞき込む。作者の内面に深く寄り添うような気持ちになる。

 開館は1998年。細見良行館長によると、重要文化財を所蔵する財団では初の地下美術館だという。高い建物が建てられない地域という要因もあるが、秘密の小部屋を訪ねるような独特の雰囲気は、細見館長の遊び心の反映でもあるだろう。

 「アミューズメントスポットにしたかった」といい、カフェを併設し、オリジナルグッズも充実させた。今でこそ当たり前だが、当時はそうしたミュージアムは少なく、「おしゃれな空間」として話題になった。

 だが、展示は王道を目指す。開館後10年間は「コレクションの内容を伝えるため」、日本古美術に徹した。祖父の良(初代古香庵、1901~79年)、父の實(みのる)(22~2006年)、細見館長へと3代続く細見家の収集は、縄文美術から始まり、平安・鎌倉の仏教や神道美術、桃山の工芸、江戸絵画など各時代を網羅する。美術館建設は、祖父の頃からの構想だった。

伊藤若冲 雪中雄鶏図 江戸中期

 「現代人に古美術の良さを伝えたい」と細見館長は考える。「自国の古美術を知る人が世界で認められる。抽象絵画で知られるオランダの画家モンドリアンも本国の伝統美術を学んだ素地があってこそ成功した」。日本の現代美術の第一人者、杉本博司さんも、同館で自作と古美術品を組み合わせた展覧会を開き、新たな可能性を示した。

鈴木其一 朴に尾長鳥図 江戸後期

 近年は、伊藤若冲や江戸琳派の展覧会が人気だ。若い人たちは琳派の作品を見て、日本にこんなきれいなものがあったなんてと驚くという。「教科書では雪舟や狩野派など崇高な漢画的世界にまず触れる。それもいいが、もっと明るくきれいな、心くつろぐ美を知ってもいい」。楽しむことで、美の世界はより広がると細見館長は提案する。

 

 細見美術館 細見家は大阪府泉大津市にあり、収集した美術品で邸宅を飾っていた。美術館建設にあたり細見館長は全国を視察後、「日本文化の中心の一つはやはり京都の岡崎」と考え、現在地を選んだ。好きな館蔵品は鈴木其一「朴に尾長鳥図」。近代画を思わせるモチーフや大胆な構成が見飽きないという。伊藤若冲「雪中雄鶏図」もお薦めだ。京都市左京区岡崎最勝寺町。075(752)5555。