寄贈された頭を見定める阿部さん(滋賀県長浜市富田町・冨田人形会館)

寄贈された頭を見定める阿部さん(滋賀県長浜市富田町・冨田人形会館)

  明治から昭和にかけ文楽座(大阪市)で活躍した人形浄瑠璃の人形遣い5代目吉田辰五郎(1897~1973年)が所有した人形の首(かしら)を、辰五郎の長男の天満孝実さん(86)=滋賀県守山市播磨田町=が、滋賀県長浜市の「冨田人形共遊団」に寄贈した。同団は人形浄瑠璃「冨田人形」(滋賀県指定無形民俗文化財)を伝承する団体で、阿部秀彦団長は「大変貴重なもの。感謝を込め使いたい」としている。

 首は目や口、眉毛、鼻などを引き栓と呼ばれる糸で操る。寄贈された首は武士や町人、娘、子ども、老婦人、鬼など34点で、明治以前に制作されたものもあるという。首を支える胴串(どぐし)には「辰五郎」の刻印がある。
 近松門左衛門の時代物「出世景清(かげきよ)」の主人公の景清もあり、鬼の胴串には阿波国(徳島県)の有名な人形師「天狗久(てんぐひさ)」の銘が刻印されている。5代目辰五郎は首の保存に尽力したことで知られ、亡くなった後は天満さんが自宅で保管していた。
冨田人形は長浜市富田町に江戸末期から伝わり、かつては約30の演目を公演していたが、今では団員が18人に減り、14の演目を上演している。
 同団は、景清の首を、来年8月びわ文化学習センター(同市難波町)で上演する、山内一豊を主人公にした冨田人形の創作浄瑠璃「似合夫婦(にあいのふうふ)出世絏(ひきづな)」に使用することにしている。
 今後かつて上演していた「ひらかな盛衰記」や「伽羅(めいぼく)先代萩」の時代物を復活させる予定で、寄贈された首を使うという。天満さんは「父は冨田人形にも参加していた。今回、ご縁を感じ寄贈した。父の遺志を継ぎ、有効に活用してもらえれば」と話している。