新型コロナウイルス感染症について、政府は感染症法上の位置付け見直しを検討するという。

 新型コロナとインフルエンザが今冬に同時流行する場合に備え、医療現場の混乱を回避する狙いがある。

 新型コロナは現在、危険度が5段階で2番目に高い2類相当の「指定感染症」に分類されている。原則として感染者に入院勧告し、医療機関に入院してもらう措置を取っている。

 感染者数の増加に伴い、医療機関や保健所の負担は重くなっている。冬になればさらに現場が逼迫(ひっぱく)する懸念がある。

 分類を3類以下にすれば入院勧告の必要がなくなり、重症化しやすい人を優先的に入院させやすくなる。現場からは「2類外し」の要望が多いという。懸念には具体策で応えなければならない。

 だが、位置付け見直しはコロナ対応の根幹にかかわる。専門家の知見や現場の実態に基づいた丁寧な検討が必要だ。分類を変更するなら、国民が納得でき、安心できる根拠を示してほしい。

 見直しを巡っては、感染拡大につながりかねないと慎重論も根強い。実際にどれだけ現場の負担軽減につながるかも不明だ。

 さらに分類見直しで位置付けが引き下げられると、検査などの公費負担がなくなり、患者に自己負担が生じる可能性もある。

 医療体制にゆとりを持たせるため、軽症者や無症状者は宿泊施設などで療養してもらう運用が既に始まっている。

 現場からは、軽症者や無症状者の感染状況が把握しにくくなり、市中での拡大が進む恐れがあるとして、公費負担の継続を訴える声が上がっている。

 見直しについて、埼玉県の大野元裕知事は「現場で対応するための権限がますますなくなる」と懸念を示した。佐賀県の山口祥義知事は入退院の基準を明確にするよう国に求めている。

 6月以降の感染再拡大では「第1波」を上回る感染者数が続いたが、重症者は少ない。政府内では分類見直しを容認する考えがあるようだ。新型コロナへの国民の不安を拭い、経済活性化につなげる狙いからだろう。

 政治判断が先走りするようなことはあってはならない。見直しで感染者が増えれば、収束はさらに遠のく。

 冬に向け、十分な医療を保障するためには、検査や診察の体制充実を急ぐべきだ。