自民党は党大会をきのう開き、2019年運動方針を採択した。統一地方選と参院選の勝利を目指すとともに、憲法改正に向けて世論喚起を図るとした。

 安倍晋三首相(総裁)は経済や雇用など政権の成果を強調し、悲願の改憲に言及した。選挙を意識し、政治決戦に挑む決意をアピールしたといえる。

 政権転落のきっかけとなった07年参院選の敗北にも触れ「当時総裁だった私の責任。片時たりとも忘れたことはない」と述べた。

 政権に復帰して6年余り。今年の党運動方針に特徴的なのは、かつて国民の信頼を失ったことへの反省の言葉がなくなった点だ。

 これまでの運動方針では直近の国政選挙で勝利していても、毎年のように「必ずしもわが党の信頼回復を示すものではない」などと厳しく自己分析し、政権運営を進める上で自らを戒める文言があった。昨年も09年の下野に触れ「この苦い経験を忘れた時、再び国民は自民党に鉄ついを下す」との言葉が明記されていた。

 自民党はかつて主流派と反主流派が争い、多様な意見をぶつけ合うことで世論を政策に反映してきた。だが、政権の長期化で「安倍1強」体制が定着し、党内で活発な議論が事実上封じられている。

 例えば安倍氏が進めるロシアとの平和条約交渉。北方四島を「日本固有の領土」としてきた歴代政権との整合性を問う声が上がらない。外国人労働者の受け入れ拡大や働き方改革など、国の政策転換と言える重要テーマでもほとんど異論は聞かれなかった。

 党所属議員が自由闊達(かったつ)に発言しなければ、政党はますます政府の下請けのようになるだけだ。国民の声に目を配り、対処することが重要ではないか。

 まず今、取り組むべきことは勤労統計不正の問題である。議院内閣制下で与党は政府を監視する重い使命をもつ。責任政党を自負するならば役割をきちんと果たすべきだ。

 森友・加計問題をはじめ陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)や裁量労働制に関する不適切データといった問題はいずれも政権に不都合なことを隠す結果となった。

 権力の集中と長期化は、おごりや腐敗を生みがちだ。広く世論に謙虚に耳を傾け、政府に行き過ぎがあれば時にはブレーキをかける力量や、懐の深い骨太の政策論議こそ政権党には求めたい。その責務をしっかり果たすのか国民は注視している。