国内に住む全ての人を対象にした5年ごとの国勢調査が、10月1日を基準日に実施される。

 人口や世帯構成を把握し、国民生活に関するさまざまな施策の基礎資料となるデータを集める。極めて重要な調査である。

 ただ、対象者から回答が得られない「未回収率」が毎回跳ね上がっており、調査の困難さが浮き彫りになっている。

 単身や共働きによる不在の増加や、プライバシー意識の高まりが背景にある。回収率の低下は、統計の信頼性にも関わる。調査への理解と協力を得られるよう、政府は国民に対し、丁寧に説明を尽くす必要がある。

 未回収率は調査の都度、倍増しており、2015年には13・1%に上った。東京都に限れば30・7%にも達している。

 未提出世帯については、調査員が近隣から氏名や世帯人数を聞き取る。ただ、こうした方法では人口や世帯数は計上できても、就業状況などのデータを得ることは難しい。

 対象者が回答しやすい環境をつくることが重要だ。時代に合った調査の仕組みを整え、普及させていかなくてはならない。

 政府も対策は進めている。調査員が各戸に調査票を配布・回収していた従来のやり方から、回答を郵送やインターネット経由で行えるよう改善している。

 特に今年は、新型コロナウイルス対策として、調査員が住民と対面する機会を極力避け、調査票を郵便受けに入れる方式を原則にするという。

 中でも力を入れるのは、15年から本格導入し、36・9%が利用したネット回答率の向上だ。

 必要項目を埋めないと送信できないため記入漏れなどをなくせる利点もあるといい、今回は50%超を目標にしている。

 ネット回答の普及は、回収率アップや調査員の負担軽減にも貢献しよう。高齢者や障害者などネットが使えない人に配慮しつつ、長期的にはネット回答を基本にした仕組みに変えていく必要があろう。

 その前提となるのは、統計調査に対する国民の信頼だ。

 昨年1月に発覚した「毎月勤労統計」の不正では、ルールを逸脱した調査方法が長く続けられていた。そのため、統計結果を算定基準とする失業給付などが低く抑えられ、影響は延べ1900万人余りに及んだ。

 政策立案の基礎となる統計の重要性を、政府自らが軽視していたといえる。直後の世論調査では政府統計を信用できないとする人が8割近くに達した。こうしたことも国勢調査の回収率低下と無関係ではあるまい。

 調査項目も再検討する必要がある。今回、性的少数者や支援者の団体が「同性カップルの実態把握につながる」として世帯数の集計を求めた。だが、高市早苗総務相は「わが国の婚姻関係は異性間に限定されている」と、集計には否定的だ。

 データなしでは性的少数者向けの政策づくりは進みにくい。

 これからの社会づくりにはどんな統計が必要か、時代状況を見極め、調査の内容や手法を精査していくことが不可欠だ。