初の協業開始に向けて契約書を交わす島津製作所の社長(左)と堀場製作所の社長。コロナ危機の中で企業間の交わりは重要になっている=京都市下京区

初の協業開始に向けて契約書を交わす島津製作所の社長(左)と堀場製作所の社長。コロナ危機の中で企業間の交わりは重要になっている=京都市下京区

 世界経済を大混乱に陥れた新型コロナウイルスの影響が長期化している。京都や滋賀でもほぼ全産業に打撃が及ぶ一方、かつてない苦境の中で事業者が手を取り合う動きが広がった。感染拡大を防ぐため、他者との接触を減らす生活が続くが、企業は危機打開に向けてむしろ積極的に他社と交わるべきだと考える。

 8月初め、京都市に本社を置く島津製作所(中京区)と堀場製作所(南区)が初の協業を発表し、両社長がそろって記者会見した。互いの主力製品を組み合わせ、創薬などに役立つ新しい計測・分析システムの開発に取り組む。

 京都を代表する計測機器メーカー2社の「電撃提携」は業界を驚かせた。事業が一部競合し、「かつて激しく販売を争った」(中堅社員)というライバルでもあるからだ。島津製作所の上田輝久社長は「社風は違うが、いろんな分野で情報交換できればさらに会社が強くなる」と語った。

 今回の協業は新型コロナがきっかけではないが、これからの企業像を考える上でヒントになる。技術やサービスを絶えず磨く一方、自前に固執せず競合相手とも手を組む。この「競争」と「共創」の両方が、コロナ時代の企業経営で重要になると感じる。

 経済インタビュー「挑むコロナ危機」で取材した京滋企業のトップは、ビジネスや会社を根本から変えようとしていた。印象に残ったのが、150年近い歴史を持つ和洋菓子製造のたねやグループ(近江八幡市)。これまで作れば売れたという菓子の売り上げが一時激減し、ネット通販の強化と同時に自社店舗に限っていた商品の取り扱いをコンビニなどにも広げた。

 ブランド重視の経営を反省したという山本昌仁最高経営責任者(CEO)がコロナ後に見据える姿は、徹底したオープン化だ。原料配合など門外不出の情報を開示し、会社を菓子作りのプラットフォームにするという考えには正直驚いた。世界中の人が開発したアプリを楽しめるスマートフォンのモデルを菓子の世界で実現するイメージだ。これもまた、社外と交わることで発展を目指す道である。

 企業が交じり合う場に、京都は適している。中小加工会社が連携する「京都試作ネット」の初代代表を務めた鈴木三朗さん(71)は、京都の経済風土を「ぬか床」と表現する。さまざまな細菌が生きるぬか床に野菜を漬ければおいしくなる。大手や老舗、伝統産業まで企業の裾野が広く、大学や人材も豊かな京都は、企業同士が交じることでぬか床のように新たな価値を生み出す作用があるという。

 「コロナを単独で乗り切るのは難しい。地域の企業が交じり合い、『ああやこうや』と考えて答えを見つけ出すしかない」と話す鈴木さん。ぬか床は毎日かき混ぜ続けなければならない。廃れれば復元は難しく、産学官で活発に交じり合うことが傷んだ地域経済の再生に欠かせない。