イラスト・冨田望由

イラスト・冨田望由

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 東京の東にある大人気のテーマパーク。その真ん中にそびえ立つシンデレラ城の石垣は、低いところに大きな石、高いところに小さな石が並んでいます。お城を実物より高く錯覚させ、少ない費用で大きな効果を与えるためのテクニックです。私たちは、近くにあるものは大きく、遠くにあるものは小さいように感じますが、この見え方の癖を利用しているのです。

 オーストラリアのディーキン大のジョン・エンドラー教授たちは、これと同種のトリックをオオニワシドリが使っていることを見つけました。この鳥のオスは、求愛のため木の枝を地面にたくさん突き立て、平行に並んだ2列の壁を作ります。壁の間は通路のようになっていて、メスはそこに誘い込まれます。左右を壁に遮られたその場所で、メスは視野が開けた通路の向こう側を見ることになりますが、オスはその舞台で求愛のダンスを踊るのです。

 ここでトリックが使われます。オスはあらかじめ舞台に石、動物の骨、貝殻などを敷き詰めていますが、このとき、メスから見て近い場所には小さなもの、遠い場所には大きなものを並べます。シンデレラ城とは逆のパターンです。これは舞台を小さく錯覚させる働きがあるはずで、その上で踊るオスは実物より大きく、メスの目に映っているのかもしれません。

 遠くに大きな石が置かれているのは、たまたまではありません。手前に大きな石が来るよう人が並べ替えても、オスはすぐに元どおりに戻すのです。そして、並べるものの大きさをより規則的に変えられるオスの方が、メスにモテることがわかっています。

 動物の感覚には癖があるもので、感じるもの見えているものがいつも事実だとは限りません。ネズミの魔法にだまされたくないならば、このことを頭の片隅に置いておくと良いでしょう。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。