将棋の「二歩」や連珠の「三三」、相撲では目を突く、まげをつかむのは「禁じ手」とされる。邪道、危険などと戒められてきたものだ▼そんな禁じ手になりふり構わずにすがったのが、「アベノミクス」ではなかったか。デフレ経済脱却へ「輪転機をぐるぐる回し、無制限にお札を刷る」とぶち上げた安倍晋三首相は、独立性を掲げる日銀を従え、大規模な金融緩和による資金供給で「円安・株高」を導いた▼アベノミクスの「三本の矢」を掲げつつ、「地方創生」「1億総活躍」など看板を掛け替え、期待をつないできた。中身は、膨らむ財政支出を日銀の国債購入で事実上肩代わりさせる形で、禁じ手に踏み込んだと指摘されている▼政府広報オンラインの今年1月特集「データで見るアベノミクス」は、約7年で名目GDP66兆円増、完全失業率は約半減、訪日客3倍超などを誇ったが、コロナ禍で軒並み色あせている▼大量のお金を市中に流して景気浮揚を図ったアベノミクスだが、実際に刷られる1万円札は近年減少し、本年度は初めて10億枚を割り込む。キャッシュレス化が理由だ▼巨額の経済対策費をつぎ込むポイント還元策も、新紙幣を減らすことになるという。何とも皮肉だ。ぐるぐる輪転機で刷りっぱなしなのは国の借金証文ということか。