事実上の次期首相を決める自民党総裁選の構図が固まった。岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長に続き、菅義偉官房長官がきのう立候補を表明した。

 党員・党友投票は行わず、両院議員総会で新総裁を選ぶ。立候補する3人は具体的に政策論争を闘わせ、それぞれの政権構想を明確にしてほしい。

 聞きたいのは、7年8カ月に及んだ安倍晋三政権をどう総括するかだ。何を継承し、何を変えるのか、国民にはっきり示すべきだ。

 焦点の一つは、経済政策「アベノミクス」である。

 閣内でアベノミクスを支えてきた菅氏は、きのうの会見で株価や雇用などでの成果を強調した。「しっかりと責任を持って引き継ぎ、さらに前に進めていきたい」と述べ、日銀との関係を含めて政策を継承すると明言した。

 これに対し、岸田氏と石破氏は独自色を打ち出している。

 岸田氏は「成長の果実が中間層や中小企業、地方に分配されていない」とし、格差解消に向けて所得の再分配に目配りする姿勢を示した。子供の貧困などの対策にも意欲をみせている。

 石破氏はアベノミクスで株価は上がったが「個人所得は伸び悩んでいる」と指摘し、都市と地方の格差是正に取り組むという。消費税についても果たすべき役割をもう一度検証するとした。

 このほか国民の批判が大きい新型コロナウイルスへの対応や、森友学園問題など安倍政権で生じた疑惑解明への姿勢も問われよう。

 今後は都道府県連に3票ずつ配分される計141の地方票の行方が注目される。党本部は「予備選」を促したが、党員の声をどれだけ反映できるかは未知数だ。

 思い出されるのは、2000年に当時の小渕恵三首相が病気で倒れた際のことだ。

 一部の有力者の話し合いで森喜朗氏が後継に選ばれたとして「密室」批判が高まった。国民の疑問は最後まで払拭(ふっしょく)されず、森政権は低支持率にとどまった。

 総裁選の有権者が国会議員らに限定されては、新政権の正統性にも疑問符がつく。

 しかも今回、自民党の主要派閥は正式な出馬表明も政権構想の発表もない段階で、菅氏支持へ雪崩を打った。告示前から「出来レース」との声も上がっている。

 事実上国のリーダーを決めるというのに、内輪だけの論理がまかり通っていないか。国民が見ているという意識を持ってほしい。