柳原さんから引き継いだブドウ園で収穫作業に取り組む黄瀬さん(写真奥左)や小山さん=亀岡市

柳原さんから引き継いだブドウ園で収穫作業に取り組む黄瀬さん(写真奥左)や小山さん=亀岡市

柳原正さん(手前写真)との思い出を話す茂子さん。ブドウの色が大好きだったという(京都市南区)

柳原正さん(手前写真)との思い出を話す茂子さん。ブドウの色が大好きだったという(京都市南区)

 京都府亀岡市薭田野町で約30年、妻とブドウ園を営んでいた京都市南区の男性が今年2月、82歳で亡くなった。希少種を手間暇かけて育てる園で、閉園を惜しむ関係者らが思いを受け継いだ。新たな園の名は、「HANDOVER(引き継ぐ) FARM」。無農薬ブドウ園として、再び実りの秋を迎えている。

 ブドウ園を開いていたのは、同町出身の柳原正さん。妻茂子さん(84)によると、島津製作所社員だった正さんがブドウ作りを始めたのは約30年前。雨宿りのために入った書店で偶然、ブドウの本を手に取った。木や実の色づきの美しさに引き込まれ、自分で作ろうと思い立った。

 以来、正さんと茂子さんは実家の畑でブドウ栽培を始め、定年後はほぼ毎日、畑に通ってきた。栽培したのは粒の大きい「藤稔(ふじみのり)」、果汁豊富で柔らかい「紅伊豆(べにいず)」、巨峰と掛け合わせた「夕映(ゆうばえ)」など。いずれも店にはあまり出回らない品種だ。「美しく、粒が大きくスッと皮がめくれるブドウ」を目指していた正さんは、常々「何回やっても答えはでない」と試行錯誤を続けた。自宅には研究ノートが残る。

 昨年6月、正さんは体調を崩し、春を前に亡くなった。茂子さんが閉園を考えていた時、陶芸家の黄瀬充さん(52)=京都市西京区=ら有志が、ブドウ作りを引き継ぐと名乗り出た。「主人もきっと喜ぶ」。茂子さんは黄瀬さんらに後を委ねた。

 黄瀬さんは約10年前から畑近くのアトリエで陶芸を研究しており、正さんのブドウを食べて感動。4年ほど前から、高齢の正さんの作業を手伝っていた。「なんとか園を残したい」と、今年3月、正さんから教わったことを思い出しつつ自然栽培でのブドウ作りを開始。仲間は、ダンサーなど本業で創作活動に取り組む人たちだ。グラフィックデザイナーの小山真有さん(37)=薭田野町=は、「正さんが美しいブドウ作りに打ち込んだのは、きっと、ものづくりの感動があったから。その背景も受け継ぎたい」と話す。

 ブドウは20日ごろまで毎日午前10時~午後1時、畑(同町太田竹ケ花38)前で直売している。手提げ袋の持参が必要で、売り切れ次第終了。問い合わせはメールアドレスhandoverfarm@gmail.com