「吃音の当事者と社会の認識のギャップを伝えたかった」と話す近藤さん(京都市右京区)

「吃音の当事者と社会の認識のギャップを伝えたかった」と話す近藤さん(京都市右京区)

 頭の中に伝えたい言葉があるのに相手に伝える前に詰まってしまう「吃音(きつおん)」に苦悩する人々を追ったノンフィクション「吃音 伝えられないもどかしさ」を、当事者のフリーライター近藤雄生さん(42)=京都市右京区=がこのほど出版した。不登校や離職、時には自殺にまで追い込まれる当事者約50人を丹念に取材した作品で「深刻さを伝えたい」と話している。

 <物心がついたころから思うように話すことができなかった。言葉を発しようとすると、なぜだかわからないが喉の辺りが硬直する。そのまま音を出そうとすると、「ご、ご、ごはん……」のようにどうしてもつっかえる>

 「吃音 伝えられないもどかしさ」は、ある男性の生い立ちから始まる(作品では実名)。男性は小学校での自己紹介でどもって笑われ、高学年で不登校に。中学、高校と進むごとに吃音は悪化し、高校を中退した。会話ができないことで就職もできず、孤独の中で毎日「死にたい」と考えていった。作品には、男性のような吃音の当事者が次々と登場する。

 近藤さん自身も吃音で苦しんだ。就職はできないと考え、海外を旅しながら原稿を書く独特のスタイルで「遊牧夫婦」などのノンフィクションを書き、フリーライターを職業とするようになった。「悩んだ自分だからこそ、吃音は書くべきテーマと考えた」

 作品は当事者約50人に家族、言語聴覚士などを加えた計80人以上に5年間かけて取材。電話に出る、店で注文するといったことにすら「詰まったらどうしよう」とおびえ、コミュニケーションがうまくいかないことがいかに人生に影を落とし、孤独に追い込んでいくかを鮮明にする。吃音は日本で成人約百万人に症状があると推定されるのにメカニズムが不明な点や、治療の試み、当事者団体、就職面接時や職場での配慮といった近年の社会の変化にも触れている。

 近藤さんは「吃音について社会が知るきっかけになり、吃音のある人たちにとって何らかの意味を持つ本になれば」と話している。四六判、224ページ。新潮社刊。1620円。