ヒット曲「一円玉の旅がらす」がNHKの「みんなのうた」で放送されたのは1990年というから、30年前である。一円だって夢もある、出世街道どこへ行くとの歌詞が、多くの人の共感を呼んだ▼バブル経済の華やかな頃で、お金の話が街中に飛び交っていた。前年に3%の消費税が導入され、半端なお釣りとなる一円玉の必要度は増していた。現金の輝いていた時代といえよう▼時を経た今、叫ばれているのは、キャッシュレス決済の拡大である。経費や手間を省き、経済効果をもたらすとして、政府は新しい成長戦略の柱に位置付けている。拡大しないのは、銀行間の振込手数料が、長年高いまま据え置かれているからだ、ともする▼先月、手数料を引き下げるため、大手銀行を中心に新たなシステムの構築を検討することが、発表された。送金にかかる費用が少なくて済むなら、預金者にとってもありがたいことだ▼一方、銀行の収入は減る。みずほ銀行は来年から、新規の口座開設で紙の通帳を発行する際、税込み1100円の手数料を取ることにした。デジタル通帳への移行を促し、経費の節約を図る。他行なども追随するのではないか▼キャッシュレス促進費の請求書が、回ってきたような気がする。一円玉は夢を失って、出世街道を外れそうだ。