国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト」最新版で、3万2411種もの野生生物が絶滅危惧種に認定された。

 状況が改善した種は少なく、新たに日本人になじみ深いマツタケなども加えられた。保全は容易ではないが、猶予はない。生命のにぎわいを次代へつなぐのは、今を生きる私たちの責務である。

 世界の科学者らでつくるIUCNは1964年にレッドリストを創設。絶滅の恐れがある動物や植物、菌類などの保全状況を地球規模で調べており、最も信頼度が高いとされる。いわば失われつつある自然の貴重さを表す「目安」ともいえる。

 今年7月時点で絶滅危惧種とされたのは、調査した約12万種の生物の約27%に当たり、前年版より4千種以上増えた。

 日本関連は504種が認定された。京都府と岡山県だけに生息する淡水魚のアユモドキなど57種は、危険度を3段階に分類した中で最も危ぶむべき「深刻な危機」とされた。マツタケは3番目のランクだ。中国や韓国などにも分布するが、日本では松枯れ被害や過剰な採取で生育する松林が減った。絶滅危惧種に指定されただけでは国際取引は規制されないものの、厳しい実態を直視せねばなるまい。

 ニホンウナギは2番目の「近い将来の絶滅の恐れが高い種」に据え置かれた。高価で取引される日本市場目当ての過剰で不透明な稚魚の捕獲に加え、ウナギの遡上(そじょう)を阻むダムなど河川の生息環境の悪化が大きな脅威になっている。いかに改善するかが問われている。

 地球上の生物を取り巻く環境は悪化の一途をたどっている。農地などの開発により生息地が減ったり、密猟などの乱獲や環境汚染で生息数を減らしたり、原因はいろいろだ。人間が持ち込んで独自の生態系や生物多様性を脅かす外来生物の影響も大きい。いずれも人間の営みに起因しているのは間違いない。

 とりわけ近年は地球温暖化に伴う生息環境の激変が深刻だ。温室効果ガス排出が今のペースで進み、今世紀末の気温上昇が4度近くになると仮定すると、種の7割超が適応できないとの研究報告もある。温暖化対策は待ったなしといえよう。

 絶滅の危機が進む中、保護活動の現場では、新型コロナウイルスの感染拡大による悪影響が顕在化しつつあるという。各国で活動資金を支えてきた観光収入が激減。生物種保護プロジェクトが中断を余儀なくされ、監視の目が少なくなり密猟も増えているそうだ。

 長い時間をかけて進化したさまざまな生物が存在し、それらが互いにつながっていてこそ豊かな生態系が存在する。生物多様性は食料供給や気候の安定など人間に多くの恵みを与えているが、加速度的に失われつつある。

 名古屋市で2010年に開かれた生物多様性条約締約国会議(COP10)は、「森林などの生物生息地の損失速度を半減する」といった生態系保全の「愛知目標」を採択した。目標の多くは20年までに緊急行動を求めていたが、達成は難しい。実効性を高めるには国際社会の危機感の共有と結束が鍵となる。