この国の新たなリーダーを事実上決める、重みと責任を背負って臨んでもらいたい。

 辞任表明をした安倍晋三首相の後継を選ぶ自民党総裁選が告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3氏による選挙戦がスタートした。

 今回の総裁選は、政治の空白を避けるためとして原則である党員・党友投票を行わず、選挙期間も7日と短くなった。

 国会議員票が全票数の7割超の重みを持つ中、すでに党内7派閥のうち5派閥などから支持を得る菅氏がかなり優勢で、追う石破、岸田両氏に水をあけている構図が明らかになっている。

 勝ち馬に乗ろうとする派閥の数合わせで大勢を決し、選挙の体裁だけ繕おうというなら「密室政治」との批判を免れまい。

 第2次政権発足から7年8カ月に及ぶ安倍長期政権に代わる新体制である。何を引き継ぎ、変えるのであればどのようにか。3氏は分かりやすく政権構想を説明し、広く国民に開かれた政策論争をたたかわせてほしい。

 党本部での演説会で、菅氏は支えてきた安倍政権の路線の「継承と前進」を強調した。対する石破氏は「納得と共感の政治」、岸田氏は「分断から協調へ」を掲げ、独自色の打ち出しを図った。

 3氏とも地方の振興を訴えたのは、47都道府県連に3票ずつ与えられた地方票の獲得を意識してのことだろう。大半の地方組織が党員・党友の予備選を行って投票配分を決める。実質的に党内世論を映し出すことになるためだ。

 菅氏は、地方票も着実に積み上げて本格政権づくりへの求心力としたい考えだ。石破、岸田両氏は地方票の人気で存在感を示し、来秋までに行われる次の総裁選につなげたいところだろう。

 だが、今回は、新型コロナウイルス対策のため全国遊説は行われず、投開票の14日までの期間中、2回の討論会が予定されているのみだ。

 国民の前でつまびらかにすべきなのは、安倍氏がとってきた政策をどう総括するかだ。

 大規模な金融緩和と財政出動を続けても成長軌道を描けないアベノミクスの評価や、人口減少と「ウィズコロナ」の時代にあっても持続可能な経済や社会保障、財政の立て直しをいかに進めるかは待ったなしの課題だ。格差社会の是正や地域の活性化も併せ、具体的な処方箋と将来的な展望を論じ合ってほしい。