リビングの一角にある実母の棚。「もらってきたわ」とデイサービスで作った折り紙などを機嫌良く持ち帰ってくる(8月26日)

リビングの一角にある実母の棚。「もらってきたわ」とデイサービスで作った折り紙などを機嫌良く持ち帰ってくる(8月26日)

 京都市西京区の3階建て住宅に、女性(57)ら夫妻と親2人、子2人の3世代6人が暮らす。親は夫婦ではなく、女性の実母と、夫の父である義父。共に認知症があり、3年前の建て替えと同時に同居を始めた。
 女性は、入退院を繰り返す義父と同居するために建て替えの計画を進めたが、建築中に実母の症状が悪化し、実母とも同居することになった。
 1階に義父の寝室。部屋が足りず、実母のベッドは2階のリビングに置き、カーテンでダイニングキッチンと仕切っている。壁の少ない開放的な家で、実母と義父の声や変化に気付きやすいが、お互いを避けることができない。食事中、今年から社会人になった長女(23)が職場のことを話していたら、実母がカーテンを開けて「うるさい」と怒鳴ってきたこともある。
 義父も幻覚に苦しむことがあり、片時も気配りを怠ることができない。
 大学2年の長男(20)は実母を刺激しないよう、リビングを避けてキッチンや洗面所前で食事をとる。長女も、嫌な顔を見せずに2人の言動を受け止める。
 「私が同居しようと言ったばかりに、子どもに我慢を強いている」
 ◇
 晩婚化が進み、親の介護と子育てが重なる夫婦が増えている。女性も10年近く介護に追われ、受験などの節目に子どもの悩みを聞いてあげたり、見守ったりできなかったと負い目を感じていた。
 しかし、長男が反抗期を終えたころ、母である女性に言った。「おかんに介護が必要になったら僕がみる。順繰りなんやから」。誰もが年を取り、認知症になったり、家族の支えが必要になったりする。長男から見れば今は祖父母だが、いずれは母や父、そしてやがては自分自身も。
 女性もまた、実母から学んだ。実母は認知症で寝たきりの夫を自宅でみとった。「私が誰かを分かってないみたい」と笑い飛ばしていた。同じ立場になって、実母の気持ちが分かった。女性も実母から施設職員と間違えられることがあるが、愛情を注いでくれた優しい母が今もそのままいると感じる。
 実母が「お母さんは忙しいんだから買い物なんか誘うな」と長男を怒鳴り付けたことがある。自分のことを大事に思う気持ちが伝わり、うれしかった。長男には申し訳なかったけれども。
 ◇
 実母や義父が体調を崩すと不安が募る。体調を戻して、憎まれ口をたたき、いらいらするほどの生気を感じる母や父に戻ってほしい…。
 「プロじゃないから私が母や父をいらいらさせることもある。みんな完璧じゃない。お互いに少し譲って折り合いを付け、にぎやかに6人で暮らせたら」
 昭和歌謡の一節「狭いながらも楽しいわが家」が続くように…。
 「うーん、幸せや」。元気な実母をデイサービスに送り出して落ち着き、ふとつぶやく。
 心配事は尽きない。8月中旬の早朝、実母をコンビニで保護したと警察から連絡が入った。リビングで寝ていると思っていた。実母は家の中も壁伝いで移動するほど歩くことがつらく、「外には出ない」と考えていた。義父は一時、全く食事に手を付けなくなっていたが、ようやく退院の見通しが立った。
 「あの手この手を考え、まずはやってみよう」
 同居を始めたころと同じように4人で話し合った。女性は決して一人じゃない