<僕は死と向き合いながら、ひたすら生について考えていました>。急性リンパ性白血病などで150日近く入院した、京都大工学部3年の山口雄也さんの闘病記をブログで読んだ▼深夜に経験したことのない激痛に襲われ、看護師に押さえつけられながら叫んだ。その瞬間、生きることは<苦痛>以外の何ものでもない-と▼山口さんは骨髄移植を受け、昨年11月に退院した。その日のブログに書き込んでいる。大事なのは生について考えることではなく、<生きることそのものに集中することなのです>▼白血病で入院することになった競泳のホープ、池江璃花子(りかこ)選手に、この言葉を届けたくて拙文を書いている。「生きることそのものに集中」してほしい。周りの人もファンも、東京五輪への期待は脇に置いて、治療に専念できるよう見守りたい▼山口さんの闘病は先月の本紙連載「彩りの時代」の「病と生きる」の回で紹介した。<血液型が!変わりました!>と、若者らしい語り口のブログが共感を呼び、他の患者らとネット交流も生まれている▼痛みは物理的には分かち合えないけれど、人間は他人の痛みを想像することに長(た)けていると、山口さん。<僕は、差し伸べられた数知れぬ手に導かれるようにして砂嵐を抜けました>。池江さんも、きっと。