酒飯論絵巻(部分)茶道資料館蔵。中世日本の宴の様子が生き生きと描かれる。何種類ものバリエーションが伝わっており、展覧会では並べて違いを紹介した

<ミュージアムのちから コロナ禍に考える>

 茶道資料館(京都市上京区)は展覧会では必ず、入館者に略式で茶を供する呈茶を行ってきた。開館から40年を経た今でも年に1~2回、「茶道経験者でなくても入館できますか」と問い合わせがあり、一般の人には茶道は敷居が高いことをうかがわせる。「この場所で初めて抹茶を飲んだ」という人もおり、茶道を伝えるには「呈茶席はとても大切」と、副館長の伊住禮次朗(れいじろう)さんは考えている。

 時代とともに茶道は変化し、新たな解釈が生まれてきた。その時代ごとのありようは常に問われてきたともいえる。

 茶道の大成者、千利休(1522~91年)の没後百年を迎えた17世紀、利休に関する書物の刊行が相次いだ。茶道が世に浸透する中、利休の茶の湯に帰ろうという人、新たな茶の湯を切り開く人などさまざまな立場の人が現れ、茶道とは何かを問う発想が生まれた。刊行者はそれぞれ世に自説を投げかけた。

「今日庵月報」創刊号の表紙

 近代では1908年、裏千家が月刊機関誌「今日庵月報」を創刊した。「一門の意思統一をはかり、茶道の発展を期する」と創刊の辞にある。点前や作法は変化していくが、「機関誌ができて、家元のメッセージが直接社中に届くようになった」と伊住さんは解説する。

 茶道資料館は展覧会を通じて議論を投げかけてきた。

 90年代には「淡交ビエンナーレ」と称して、現代茶道具の公募展を行った。万華鏡をデザインした香合、クジャク柄の茶碗などが出展されている。当時の評には「前衛精神や造形の妙だけでなく、茶室で使うとどうなるかのイメージ力が必要」とあり、生活様式が変わっても、作り手は「茶とは何か」を考えるべきだと説いている。

 2018年の「酒飯論絵巻(しゅはんろんえまき)」展は、飲食場面などを生き生きと描き、日本の食文化史を考える上で欠かせない中世の絵画「酒飯論」について、写本のバリエーションを調査し、描かれた器の実物も併せて紹介するなど、喫茶文化を深掘りした。

 茶は心をくつろがせると同時に、居住まいを正す機会でもある。「資料館周辺は、家元が数百年の間、茶道を守ってきた大事な地。その場所の空気とともに、現代に生きる茶道を感じてほしい」と伊住さんは話す。

 

 茶道資料館 茶道裏千家の歴代家元が集めた茶書を今日庵文庫として1969年に公開。その後、茶道美術の公開と普及活動のため、79年に開館した。これまでは年に3~4回の企画展を開いてきたが、常設展示も検討中だ。現在は平日のみ、予約優先でミニ企画展を開催中だが、新型コロナウイルスの感染防止のため呈茶は行っていない。京都市上京区堀川通寺之内上ル。075(431)6474。