神、たける霊性。

 霊的な力を持ち、徳の高い為政者の世に現れたとされる神秘の生き物、瑞獣。古来、東アジア各地で尊ばれ、美術工芸品のモチーフとされてきた。泉屋博古館(京都市左京区)の開館60周年記念特別展は、瑞獣のうち龍、鳳凰(ほうおう)、虎が主題の約60点が並ぶ。

重要文化財「雲龍図」 海北友松 桃山時代(16世紀) 建仁寺蔵
重要文化財「呂洞賓図」 雪村周継 室町時代(16世紀) 大和文華館蔵(展示は10月1~18日)

 龍は、中国の新石器時代にはすでに原形が描かれていたとされる。モデルはヘビなど爬虫(はちゅう)類、そして竜巻などの気象現象だ。天帝の使いや仙人の乗り物と考えられ、後に皇帝の象徴ともなった。図像は日本に伝わり、海北友松「雲龍図」、雪村周継「呂洞賓(りょどうひん)図」など独自の表現が生まれた。

「百鳥図」 伝辺文進 明時代(16世紀) 鹿苑寺蔵
「桐鳳凰図屏風」右隻 狩野探幽 江戸時代(17世紀) サントリー美術館蔵(展示は9月12~30日)
「桐鳳凰図屏風」左隻 狩野探幽 江戸時代(17世紀) サントリー美術館蔵(展示は10月1~18日)

 鳳凰は華麗な冠羽や尾を持ち、天下が安寧になれば多くの鳥を引き連れて現れるとされた。辺文進筆と伝わる「百鳥図」はその情景をよく伝える。日本では狩野探幽「桐鳳凰図屏風(びょうぶ)」のように、桐と組み合わせて婚礼などのおめでたい場面に用いられた。

虎卣 商時代(前11世紀) 泉屋博古館蔵

 虎は実在するが、表現者たちは瑞獣として想像を膨らませて描いた。青銅器「虎卣(こゆう)」は、虎が人を襲うようにも守るようにも見え、古代の自然観の表れとされる。日本でも、動物園で実物が公開されるようになった近代以降でさえ、橋本雅邦「深山猛虎図」のように、写実とは離れた表現が見られる。

 「三千年の旅」とタイトルにあるように、歳月の中で現れる変容や共通性、空想ならではの伸びやかな表現を雄大な気分で楽しみたい。展示替えあり。



【会期】9月12日(土)~10月18日(日)月曜と9月23日休館。9月21日(月・祝)は開館。
【開館時間】午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
【入館料】一般800円、高・大生600円。中学生以下と障害者手帳提示の人は無料
【会場】泉屋博古館(京都市左京区鹿ケ谷下宮ノ前町)
【関連イベント】(1)クロストーク「瑞獣ってなに? 動物学者と考古学者の対話」9月21日午後2時、同館講堂。講師は坂本英房・京都市動物園長、山本尭・泉屋博古館学芸員。定員40人(2)記念講演会「龍―天地を結ぶもの」9月26日午後1時半、同館講堂。講師は小南一郎・同館名誉館長。定員40人。いずれも要入館料、075(771)6411で要予約。
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、予定変更や中止の可能性あり。ホームページで確認を
【主催】泉屋博古館、京都新聞、毎日新聞社