色彩と影 憂いと哀愁

 透き通るような白い肌にアーモンドのような形の大きな瞳の女性。憂いを帯びたまなざしで、何を見つめているのか。豊かな色彩でありながら哀愁漂うキスリング(1891~1953年)の絵画は見る者を引き付けてやまない。

《ベル・ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)》1933年 カンティーニ美術館、マルセイユ (C) Musée Cantini, Marseille

 約100年前、パリで活動した外国人芸術家たち「エコール・ド・パリ(パリ派)」を代表する画家キスリングは、ポーランド生まれ。19歳の時にパリに出て、ピカソやモディリアニ、藤田嗣治ら多くの芸術家たちと交友を深めながら、キュービズム(立体主義)などの新たな新しい絵画運動にふれるも、独自のスタイルを追求。「モンパルナスのプリンス」と呼ばれ、時代の寵児(ちょうじ)となった。

《果物のある静物》1914年 プティ・パレ美術館/近代美術財団、ジュネーヴ (C) Petit Palais / Art Modern Foundation, Genève

 展覧会では、初期から晩年までの約50点を展示。女性の若さと繊細さを表現した「ベル=ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)」や、ミステリアスな雰囲気を醸し出す「赤い長椅子の裸婦」など名作がそろう。

《赤い長椅子の裸婦》1937年 パリ市立近代美術館 Photographie (C)Musée d’ Art Moderne / Roger Viollet
《マルセイユ》1940年 プティ・パレ美術館/近代美術財団、ジュネーヴ (C) Petit Palais / Art Modern Foundation, Genève

 キスリングはユダヤ人で第1次世界大戦で外国人部隊に志願し、その功績でフランス国籍を取得した。しかし、パリでの異邦人排斥や、ユダヤ民族を迫害したナチス・ドイツに反発し、第2次世界大戦時には抗議運動によってヒトラーから死刑宣告を受け、アメリカへと亡命する。

《肖像画》1946年 個人蔵 協力:エドゥアール・マラング画廊 Courtesy Edouard Malingue Gallery
《ミモザの花束》1946年 パリ市立近代美術館 Photographie (C) Musée d’ Art Moderne / Roger Viollet

 画家として成功し、幸せな家庭を築いたが、同展監修者の村上哲さん(62)=アート・キュレーション代表=は「ユダヤ人とフランス人という民族のはざまで揺れ動く葛藤に満ちた人生だった」と分析。「鮮やかな色彩と陰鬱(いんうつ)な影の二面性が作り出す奥深い世界を通して、キスリングが生きた時代に思いをはせてほしい」と語る。



【会期】9月12日(土)~10月25日(日)会期中無休
【開館時間】午前10時~午後7時30分(入館は閉館30分前まで、最終日は午後5時閉館)
【会場】美術館「えき」KYOTO(京都市下京区、ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)
【入館料】一般1000円、高大生800円、小中生600円※障害者手帳提示の人と同伴者1人は各200円引き。
【問い合わせ】ジェイアール京都伊勢丹075(352)1111(大代表)※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、内容変更の場合あり。同館ホームページで確認を。
【主催】美術館「えき」KYOTO、京都新聞