九州のほぼ全域を暴風域に巻き込みながら北上した台風10号は各地に被害をもたらした。

 長崎市で最大瞬間風速59・4メートルを観測し、停電は九州全域で最大47万戸を超えた。死者や多数の負傷者も出て、宮崎県椎葉村では土砂崩れで安否不明となっている住民の捜索が今も続く。

 「史上最強クラス」と予測された勢力はやや弱まり、気象庁は特別警報の発表を見送ったが、強大化する台風接近への対応に貴重な教訓を残した。

 その一つが早め早めの備えの大切さだ。

 気象庁と国土交通省は接近前から頻繁に記者会見を開き、「最大級の警戒を」と呼びかけた。

 自治体も早くから避難指示や避難勧告を出し、各地の避難所には一時20万人が身を寄せ、ホテルなどへの分散避難も広く見られた。 事前にフェリーやバスを用意して住民を離れた自治体に広域避難させた試みもあり、こまめな情報発信が早い避難行動につながったといえよう。

 「空振り」を恐れずこうした避難を重ねることが、命を守る訓練にもなると考えたい。

 一方、課題もある。新型コロナウイルス対策で密を避けるため定員を減らした避難所が早々と満員になり、避難してきた人が利用を断られるケースが相次いだ。

 内閣府は4月、避難所のコロナ対策として、自治体に収容人数を減らす代わりに避難所増設や、宿泊施設、親戚・知人宅などへの分散避難を呼びかけた。

 混乱を避けるためには必要なことだが、避難所増設は安全を確保できる施設が少なければ難しい。

 愛媛県宇和島市は、高齢者や障害者、乳児を抱える保護者らがホテルなどに避難できるよう宿泊費補助制度を設けている。

 国はこうした取り組みを自治体が進めやすいよう柔軟に支援してもらいたい。

 自治体の中には、避難所の空き情報をホームページで発信し、行動につなげてもらう試みもあった。

 スムーズな避難を進める上で参考になろう。

 日本近海の海面水温は依然として高温が続いており、大型台風が襲来しやすい状態が続く。

 気象庁は、今後24時間以内に台風に発達する可能性のある熱帯低気圧に関し、進路や勢力の予報期間を従来の1日先から台風と同様5日先まで拡大することにした。

 避難や防災対策を早めに検討するのに役立てたい。