民設民営化が事実上白紙となっている大津市公設地方卸売市場(大津市瀬田大江町)

民設民営化が事実上白紙となっている大津市公設地方卸売市場(大津市瀬田大江町)

 大津市が進めてきた公設地方卸売市場(同市瀬田大江町)の民設民営化が事実上、白紙に返った状態となっている。市は、民設民営化を担う事業者として選定した企業グループとの協議を5月に打ち切り、今後改めて同市場の在り方を検討するとしている。だが市場関係者には、これまでの市の「独断的な」進め方への不信感が強い。施設の老朽化が進む中、関係者や市民の理解を得ながら新たな将来像を描けるか、市は対応を迫られている。

 8月24日、卸売・仲卸業者や有識者が出席した市場運営協議会。「(選定された企業グループとの)交渉打ち切りというが、そもそも今までわれわれに問い合わせや報告がなかった。この市場をどうするか、早くプランを立てないと」「お客からは(本当に)民営化するのと聞かれる。毎日商売する中、本当に厳しい状況にある。市はもっと早く動いてほしい」など、市への厳しい意見が相次いだ。


 市が民設民営化にかじを切ったのは2014年度。有識者などでつくる検討委員会が「民設民営化が望ましい」と提言したのがきっかけだった。築30年を超え、冷蔵設備の故障など老朽化が進む一方、改修や建て替えには多額の費用がかかるため、市の負担を減らし民間資金で活性化する狙いだった。


 市は市場関係者へのアンケートや民間事業者の意向調査などを行い、事業者を公募。今年2月、運営期間50年、敷地の賃借料年12円、建物と設備の譲渡価格1円などを提案した企業グループを優先交渉権者に選定した。だが、収益性の低さや市場の役割や業務、施設の現状の認識に食い違いがあり、交渉を打ち切った。


 市場関係者によるとこの5年間、民設民営化について市と協議する場はほとんどなかったという。年に1、2回、市場の現状や課題などを話し合うため市が設置した運営協議会も、16、17年度は全く開かれなかった。18年2月には民設民営化に反対する入場業者ら約1万人の署名も提出されたが、市は「一定の理解は得られている」として意に介さなかった。一方で、同市場が基準違反の排水を長年繰り返していた問題について、市場業者側は「施設上の不備であり、対応しないのは行政の責任放棄だ」と主張したが、市は水産加工業者個人の責任として改善させた。


 同市場関連卸組合の佐竹光春理事長は「民設民営化ありきで全て進んでいた。市はわれわれの話をほとんど聞いてくれなかった」と憤る。青果仲卸組合の星田太慶理事長も「市は市場関係者と協議したというが、民営化に向けた報告を受けるだけだった。力ずくで民営化を進めている感じで不信感があった」と振り返る。


 市もこれまでの対応が不十分だったと認める。8月24日の運営協議会では、担当者が「関係者の理解が十分得られないまま進めてきたのは認識している。信頼関係の構築に向けて今後は丁寧に話し合いをしたい」と釈明した。


 市は8月10日、市場関係者でつくる市場協会の定例理事会で、市場の運営の在り方や検討の場の設置などについて、協議を始めた。


 佐藤健司市長は「企業グループとの交渉を打ち切ったのは条件が合わなかったためで、民営化の方針を転換したわけではない」とする。その上で「廃止や、積極的な民設民営化を検討する考えはない」と述べ、公設公営や公設民営を中心に検討する考えを示唆した。


 水産仲卸組合の上野隆司理事長は「民営化自体に反対しているのではない。民間の方が効率的でスピード感ある運営ができる。だが施設や設備の更新や投資は企業では難しく、公設民営が望ましい」と話す。「市場関係者と市が協力しないと、卸売市場の再生や活性化はうまくいかない。われわれも要望や意見を集めて市に提出したい」としている。

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 大津市公設地方卸売市場 1988年10月開設。敷地面積約7万1千平方メートル。青果部と水産物部があり、卸売業者2社、仲卸業者19社、関連事業者18社(8月1日現在)が入る。2019年度の取扱高は青果部が284万3400万円、水産物部が36億9200万円。