客足の戻らない清水周辺(9月11日、京都市東山区二年坂)

客足の戻らない清水周辺(9月11日、京都市東山区二年坂)

 14日に投開票される自民党総裁選を、京都の観光業界が注視している。安倍晋三首相は観光を地方活性化の柱に据え、外国人観光客の誘致を進めてきたが、コロナ禍で状況が一変。今後の観光政策について、日本有数の観光地・京都からは「今まで通りの観光振興を維持してほしい」と悲痛な声が上がる一方、「日本人客に軸足を置くべき」と政策の練り直しを求める意見も聞かれる。

 石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3氏が立候補している今回の総裁選では、安倍政権からの継続性などが争点となり、観光政策に関する議論は低調だ。ただ、党内5派閥が支持し優勢を保つ菅氏は、観光分野でも安倍政権の方針を引き継ぐ考えを明言している。

 観光名所、京都市東山区の清水寺周辺。石畳の道が美しい二年坂沿いで竹細工店を営む男性(52)は、総裁選を経て政府の方向性が変わらないか懸念する。かつては観光客でごった返していた一帯は今、人通りは少なく、シャッターが閉められた飲食店や土産物店が目に付く。

 近年は外国人観光客の割合が高かっただけに、コロナ禍による落ち込みは大きい。周辺の商店主らでつくるまちづくり団体「古都に燃える会」の会長も務める男性は「このままでは地域の活力が失われる。国には、小規模事業者が頑張って店を開け続けようと思える支援をしてほしい」と求める。

 低迷した観光需要を喚起するため、政府は7月下旬に旅行料金を割り引く観光支援事業「Go To トラベル」を始めた。しかし、観光客は感染者が多い地域を避けようと地方や郊外を選ぶ傾向が強く、都市部での効果は薄い。

 京都市中心部の「旅館こうろ」(中京区)の8月の客室稼働率はわずか7%。修学旅行の中止も相次ぎ、9月以降も回復の見込みは立たない。北原達馬社長(42)は総裁選後に誕生する次の政権に向け、「生活あっての余暇活動だと思う。まずは経済の安定と生活の保障を進めてほしい」と求める。

 ゲストハウスなど簡易宿所の現状も厳しい。京都簡易宿所連盟のルバキュエール裕紀副代表(43)は「Go To」について「(割引額が高い)高価格帯の施設に人気が集まり、期待したような効果は出ていない」と指摘。「今は元に戻すことを最優先に考え、観光振興策を続けてほしい」と訴える。

 外国人観光客の過剰な誘致について慎重な意見もある。京都駅周辺を拠点とするタクシー運転手の男性(65)は「1日5千円稼げればいい方」という現状にあるが、市内でヤミ民泊が横行した頃、外国人の乗客を乗せると宿泊先を探すのに余計な時間がかかった苦い経験が忘れられない。「(外国人観光客による)うまみは全くなかった。現政権の路線には期待が持てない。もっと日本人観光客を大切にするべきでは」と注文を付ける。