秋田出身のたたき上げのイメージが強い菅義偉自民党新総裁は、地方向け政策への嗅覚も独特だ。8年前の著書で、一般にはなじみが薄い自治体財政改革を手がけたようすをつづっている▼総務相時代、東京都に集中する税の一部を国が吸い上げて他地域に配分し直す制度改正を実現、利払いの返済に苦しむ自治体の負担を軽くする仕組みも導入したという(「政治家の覚悟」)▼改革には他省庁との折衝が必要だ。「(命を受けた)官僚は知恵を出し、何回も交渉してくれた」と記す。官僚社会は縦割りだが、政治家が責任を負う姿勢を示せば安心して動いてくれる-。自らの経験から得た官僚操縦の知恵なのだろう▼一方で、菅氏には内閣人事局を通じて省庁幹部の人事権を握り、霞が関ににらみを利かせたこわもての印象もつきまとう。官邸主導の政権運営が官僚の過剰な忖度(そんたく)を生んだことを忘れてはなるまい▼総裁選勝利が早い段階から確実視されていた菅氏だが、首相になって何をしたいのか、どのような社会を目指すのかは明確でない。持論の「自助・共助・公助」も国民目線に立っているようには感じられない▼官僚は権力を使って自在に操れても、信頼なしに国民を安心させることは難しい。国政トップとしての責任を負う姿勢は示せるだろうか。