自民党の新総裁に菅義偉氏が選ばれ、菅政権発足が確実になった。国会議員票だけでなく、地方票の大半も獲得しての「圧勝」だった。

 7年8カ月の長期政権を築いた安倍晋三首相の路線継承が、党内世論として示された形だ。

 ただ、菅氏の当選が確実視される中でも岸田文雄、石破茂両氏が総裁選に挑み、合わせて150票超を獲得した。地方組織の投票先を決める予備選では、両氏にも一定程度の票が投じられた。

 安倍路線に対する異論が党内にもあることを示した。論戦の成果をどう党運営に生かすのか、菅氏の手腕が問われる。

 菅氏は当選後、目指す社会像として「自助・共助・公助と絆」を改めて掲げ、安倍氏の取り組みの継承が使命だと述べた。

 一方で、役所の縦割りや既得権益、前例主義を打破するとし、規制改革に強い意欲を示した。

 だが、総裁選では、なぜ継承が必要なのか、現状のどこに課題があるのか、具体的な言及はなかった。消費税増税など自身の考え方を問われた際には、慎重な物言いも目立った。

 踏み込んだ発言で、支援を受ける派閥の足並みを乱すことを避けたい狙いがあったのだろう。派閥が足かせになるようでは、自民党の古い体質が息を吹き返したとのイメージを拭えず、党運営にマイナスとなりかねない。

 総裁には、国の将来像を党の政策として示し、実行する力が求められる。党役員人事にあたっても、派閥力学を排し、党員の多様な声を反映できる体制がつくれるのかが試される。

 菅氏は安倍政権で官房長官を務め、危機管理や官僚の掌握で評価を高めた。一方で、強い権力と影響力を発揮する「安倍1強」の官邸主導体制では、首相周辺で「忖度(そんたく)」の風潮も広がった。

 森友、加計学園や「桜を見る会」の問題について、菅氏は調査済みとの認識を示した。再調査に柔軟姿勢を見せた岸田、石破両氏との違いが際立った。

 前政権の路線を継承する以上、疑惑のまま残された「負の遺産」の解明にも自らが先頭に立つ必要がある。国民への説明を尽くさなければ、党への信頼も揺らぐことになろう。

 来秋までには衆院選がある。今後の国会では新型コロナウイルスへの対応などを巡って野党との論戦が控えている。

 守りの姿勢だけでは、党内の求心力も失いかねないことを自覚すべきだ。