「芦生の森」のシンボルとして知られる大カツラ (南丹市美山町)

「芦生の森」のシンボルとして知られる大カツラ (南丹市美山町)

 南丹市美山町芦生に広がる京都大芦生研究林(芦生の森)は来年4月、地元と契約を結んで100周年を迎える。約4200ヘクタールの豊かな森林が広がっており、半分は人の手が入っていない。しかし、深刻なシカの食害や希少植物種の保護など課題もあり、同林の研究者や関係者は森を未来へ残していくための活動を続けている。

 もともと同林は、1921(大正10)年に京大が演習林として活用するため、地元の財産区管理者と99年間の借地契約を結んだ。さらに今年4月、30年の再契約をした。

 森へ入り、石原正恵林長(42)に話を聞いた。同林では長年、研究林として伐採や開発から免れて多様性が保たれてきたが、約20年前から、下草や若木などを食べ尽くすなどシカ害が目立ち始めた。

 地中に埋まっている種まで食べられたのだろうか、今は地面を覆っていたササや草花がほとんどなくなってしまい、至る所で地面がむき出しになっている。生えているとしても、シカが食べないバイケイソウやオオバアサガラばかり。

 だが、今まで食べないと思われた植物を食べた跡が見つかっているという。シカも徐々に減ってきており「森もだんだんと変わってきている」と石原さんは語る。

 また、シカ害から植物を守るためのネットを張る活動にも取り組んでいる。イワヒメワラビをはぎ取りネットで囲った所にはユリやアシウアザミなどが育っている。少しずつだが、森が戻りつつあるようだ。

 「森を残していくためには地元住民やガイド、経済や芸術といった他分野の専門家と一緒になって取り組んでいく必要がある」と語る。まずは現状を知ってもらうためにワークショップを開いてシカ害や保全活動について議論する場を作った。

 100周年を紹介するパンフレットには、シンボルである大カツラのイラストをあしらっている。高さ38メートルで幹周り10メートルの大カツラには10種類以上の植物が共生し、野鳥や小動物のすみかになっている様子を描いている。「生き物も同様に、森をいろいろな人が学ぶ場にしたい」と思いを込めたという。

 また、芦生研究林基金でタヌキランやゼンテイカなど希少植物を集めた小さな植物園を作ったり、若手研究者の研究費や老朽化した学生宿泊所の改修に充てたりするため寄付を募っている。さらに、写真展も企画している。生態系に興味を持ってもらう場にすることや未来を担う研究者の育成は、森の多様性を維持していくことにつながってくるはずだ。

 石原さんは「この100年で森を取り巻く状況は変わってきている。次の世代に引き継いでいくために、多くの立場の人とともに歩んでいきたい」と思いを新たにした。