全国の警察が、犯罪捜査に顔認証システムの活用を始めたことが分かった。

 今年3月から、犯行現場などの防犯カメラや、事件に関連する会員制交流サイト(SNS)などの顔画像を、過去に逮捕した容疑者の顔写真データベースと照合しているという。

 目や鼻、口、あごの形や位置などで本人かどうか見分ける顔認証システムは、容疑者に迫る有効な捜査手法になると期待される。

 一方で「監視社会」を招くとの懸念もある。警察が何をやっているのか、どれだけデータを持っているのか、運用実態が分からなければ気味悪さが拭えない。

 市民のプライバシーと治安のバランスをどう取るかが問われる。手続きを厳格化し、適正に使用されているのかをチェックする枠組みづくりが必要ではないか。

 その場合、チェックはどこがするのかといった問題もあり、国会も含め開かれた場での十分な議論を求めたい。それがないまま、データの登録対象が野放図に広がるようなことは避けるべきだ。

 警察や検察は、過去の「自白偏重」に対する反省から、科学技術を活用した客観証拠の収集を従来よりも重視するようになっている。それ自体は望ましい。

 顔認証は、情報分析支援システムの一機能として整備された。指紋やDNA型情報と同様、国家公安委員会で顔写真の管理、運用方法を規定しているという。

 防犯カメラの増加は、すでに容疑者の足取りをたどる「リレー捜査」などで威力を発揮している。治安への期待から大きな反対論は出ていないが、だからといってプライバシーや人権面の課題をそのままにはできない。

 まして顔認証は顔を真正面から捉えるのが基本で、斜めからなどでは認識率は下がる。過度の信頼は危険で、欧米では技術そのものが問題視されるケースもある。

 米国では今年、顔認証技術を手掛けるIT大手各社が警察当局へのソフト提供を停止すると相次ぎ表明した。肌の色や性別で精度に差があり、誤認による人権侵害の恐れがあるとの理由だ。

 国内でも捜査対象者の車に衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付ける捜査を、最高裁大法廷が「プライバシーの侵害」と指摘し、裁判所の令状がなければ違法と判断した。

 捜査に対する信頼を担保するためにも、システムの適正な利用へルールが求められる。