本年度中に撤去されるアーチ広告塔(向日市)

本年度中に撤去されるアーチ広告塔(向日市)

広告塔設置のため府へ提出された申請書類。当初は「向日町商店街」の看板が取り付けられていた

広告塔設置のため府へ提出された申請書類。当初は「向日町商店街」の看板が取り付けられていた

 京都府向日市の商店の象徴として、60年以上前から設置されてきたアーチ型の広告塔が、本年度中に撤去されることになった。老朽化が進んでおり、管理する市商工会が近年相次いでいる災害に備えて安全面を考慮して、解体を決めた。まちの歴史を物語る建造物が、姿を消す。

 広告塔は、市商工会の前身「向日町商店連合会」が、1957(昭和32)年から市内に5基設置した。高さ約8メートルのアーチ型になっており、「向日町商店街」の看板と文字を照らすスポットライトが取り付けられていた。先進的な建造物として、当時は多くの人の注目を集めたという。現在は「向日市商店街」の看板に代わっている。


 屋外に設置されているために老朽化が進んでおり、市商工会は10年に1度のペースで再塗装や補修などの管理を続けてきた。JR向日町駅前の1基が解体された後、2016年からは道路拡幅などを理由に東向日駅前など2基も取り壊された。18年秋の台風禍を受け、災害時に広告塔の破損などを不安視する声が、市民から浮上したことから、向日神社門前に残っていた2基も解体方針が決まった。


 現在は業者の選定が行われている。市商工会は「2基は府道に面して設置されており、安全面の確保を第一に考えた。広告塔はなくなるが、商工会が受け皿となり、各店の実情にあった支援を続けていきたい」としている。

 アーチ型の広告塔が向日市内からなくなることに惜しむ声が上がっている。


 撤去される広告塔の一つのすぐそばで、営業を続けてきた食料品店「神﨑屋」。設置時に土地を無償で提供した。会長の布施孝一さん(83)は「広告塔建設の話が出た時に、一番に賛成の手を上げた。ええこっちゃなって思って。それなら土地も使ってもらって、ここで建ててもらおうと話が進んだ」と振り返る。


 周辺は、京都市の伏見区羽束師や西京区大原野をはじめ、乙訓地域一帯から多くの人が訪れていた。広告塔設置については、「ほかの市町村と比べて、新しいものを作ろうとする気概が向日町にはあった」という。


 近年は、大型商店の進出などで一帯はシャッターを閉めたままの店ばかりになった。布施さんは「いい時も、駄目になった時もずっとそばで見守ってくれた。まちの歴史を今に伝える存在だったけれど、こんな時代では撤去されるのも仕方ないのかもしれませんね」と、一抹の寂しさをこぼした。