権力を手放す時、人はどんな思いを抱くのだろう。威光がそがれることへの未練か、それとも、付随する責任から解き放たれる安堵(あんど)か。その座にいた期間が歴代最長となれば、感慨もひとしおに違いない▼菅義偉内閣が発足し、安倍晋三前首相が官邸を去った。健康問題での辞任だけに、未練と安堵が半々だったかもしれない。どんな思いでこの日を迎えたか、気になる人物がもう一人いる。夫の退任で「前首相夫人」となった昭恵さんである▼異端のファーストレディーだった。会員制交流サイト(SNS)で芸能人らとの華やかな交流を積極的に発信し、「アッキー」の愛称で親しまれる一方、政権の疑惑にたびたび名前が登場した▼国有地が格安で森友学園に譲渡された問題では、学園が開設を目指した小学校の名誉校長を一時務めていた。「桜を見る会」の招待客に、自らの知人を推薦してもいた▼政府は「公人ではなく私人」と閣議決定までして昭恵さんの影響力を否定した。だが、その地位を利用しようと、さまざまな人が近づいてくる。本人の思いはどうあれ、首相夫人の背中に権力を感じ取る人は少なくない▼海外では、女性の地位向上などでファーストレディーが活躍している例もある。菅首相夫人の真理子さんはその立場をどう考えるだろう。