暮らしづらく、社会から障害を被っている人と見れば、確かに「障害者」かもしれない。でも記事を執筆時、傷つけ、災いするとの意味がある「害」の表記にためらう。姑息(こそく)ながら「障がい者」と平仮名にして、ささやかな抵抗を試みてきた▼兵庫県宝塚市は4月から障がい者政策などに関する公文書で「障害」に代えて「障碍(しょうがい)」を使うそうだ。湖南市など「障がい者」と表記する自治体は増えているが、常用漢字表にない「碍」を公的に使う自治体は全国初という▼見慣れないものの「礙(がい)」の俗字で、人が石により遮られ立ち尽くす形だ(白川静著「字統」)。戦後、常用漢字に採用されず、同音の「害」を当て「障害者」と表記してきた▼法律や公文書に使う文字は常用漢字表に基づく。新聞記事も同じ。「碍」の漢字表への追加要望は強かったが、2010年の漢字表改定時は見送られた。だが衆参両院が昨年、「碍」の追加検討を委員会決議して動きだした▼宝塚市の英断は一歩前進に違いない。でも「障碍者」を取り巻く環境がたった1文字を書き換えるだけで改善されるわけではない▼来年夏には東京五輪と併せ、パラリンピックが開かれる。さまざまな困難を乗り越え、世界各国のアスリートたちがやって来る。「障碍者」施策の本気度も試される。