人の顔を覚えるのが苦手だ。仕事で出会った人に名刺を2度渡してしまうこともよくある。昨今はコロナ禍でみなマスクをしているので、なおさら頭に入らない▼世の中にはその道のプロがいる。顔写真を頼りに指名手配容疑者を探し出す警察官たちである。数多くの顔を記憶し、繁華街や駅周辺に立って通行人の中からその顔を見つけ出す。「見当たり捜査」と呼ばれる手法である▼そんな職人技がいずれ廃れるかもしれない。全国の警察が容疑者の顔写真データベースを活用した「顔認証システム」の運用を始めたからだ。防犯カメラなどに写った人物の顔画像を入力すると、人工知能が過去の逮捕者など1千万件の中から似ている人物を選び出すという▼事業所や個人が設置しているものを含めれば、至る所でカメラが私たちの顔を記録している時代である。先端技術を有効活用すれば事件解決に力を発揮するはずだ▼気になるのは、このシステムの運用実態が明らかになっていないことである。米国などではプライバシーや人権保護の観点から、顔認証技術の捜査利用を制限する動きがある▼防犯カメラは使い方次第では監視カメラになる。プライバシーを完全に守るには、帽子にサングラス、マスクが必要だろう。逆に職務質問を受けるかもしれないが。