学校教員による性暴力が増えている。教え子が被害者になるケースも深刻化している。

 学校での被害を防ぐ対策として、文部科学省が、わいせつ行為などで懲戒免職の処分歴がある人を教壇から遠ざける仕組みを導入すると発表した。

 教員免許の失効情報を検索できるシステムの運用を見直し、都道府県などの教育委員会が処分歴を閲覧できる期間を直近3年から40年に延長する。

 現在は3年としている免許再取得までの期間についても5年に延ばすよう、教育職員免許法改正の検討を始めた。

 被害者の心身に長期にわたって深刻な影響を及ぼす性暴力は「魂の殺人」とも言われる。とりわけ、先生と子どもでは圧倒的な力の差があり、被害に遭っても声を上げづらいと指摘されている。

 再犯を防ぐことは重要だが、教員は個人の裁量が大きく、児童生徒と一対一になりやすい。学校にはこうした構造的なリスクがあることも踏まえ、対策を進めてほしい。

 文科省によると、2018年度にわいせつや性的言動で処分された教員は過去最多の282人に上った。被害者のほぼ半数にあたる138人は、加害教員が勤務する学校の子どもや卒業生だった。

 子どもにわいせつ行為をした教員について、文科省は原則として懲戒免職にするよう教委に要請している。ただ、免職になっても3年たてば教員免許の再取得は可能で、過去には児童ポルノで逮捕された教員が別の地域で採用され、子どもに加害する例もあった。

 教員の採用権限を持つ教委が過去の処分歴を参照できれば、性犯罪に絡んで退職した教員が経緯を隠して再び教壇に立つケースは防げるだろう。

 ただ、処分歴を長く共有することは人権問題に関わる。閲覧システムにアクセスできる人を制限するなど、国と教委は情報管理の厳格なルールをつくる必要がある。

 被害を未然に防ぐ環境や体制の整備も求められる。処分歴のある人を教壇から排除するだけでは、子どもを性犯罪から守れまい。

 教員からの性暴力は、授業や部活動といった指導の延長で起きることが多いとの調査結果がある。児童生徒から寄せられる勉強や生活面での相談を、教員が1人で抱え込む体制になっていないだろうか。

 他の教員に意見を求めやすい環境をつくり、チームで課題解決にあたる組織にすることは仕事の負担軽減にもつながるはずだ。学校の業務や指導体制の再検証も進めてほしい。

 児童生徒が性暴力に遭った時点で被害を認識できず、成人後に心的外傷後ストレス障害を発症した例も報告されている。教員に抱く尊敬や親しみが被害の自覚を遅らせているとの分析がある。

 近年は「デートDV」など、親しい人からの被害も増えている。保護者を含む大人が被害例や対処法を伝えることも、子どもを守る重要な対策だ。