セリやナデシコなど野草関連の名前が多いフンボルトペンギン(京都市動物園)

セリやナデシコなど野草関連の名前が多いフンボルトペンギン(京都市動物園)

50匹以上いるテンジクネズミは料理や食材関連の名前が多い

50匹以上いるテンジクネズミは料理や食材関連の名前が多い

ヤギは首輪に愛称の札が付けられている

ヤギは首輪に愛称の札が付けられている

 ニイニ、ウイロウ、ヨシツネ…。これらはいずれも京都市動物園(左京区)で飼育している動物の愛称だ。個性的なネーミングも多く、誰がどう付けているのか気になる。名前の不思議を探った。

 園によると、動物の数は8月時点で119種572頭(羽、匹)で、このうち半数ほどに愛称がある。和田睛太郎副園長は「親しみを持ってもらうため」とし、「同じ動物でも姿や行動、性格に違いがある。近年は個性を打ち出す流れがあり、愛称も増えている」。ただフラミンゴやアカアシガメなど、見た目で判別しにくい種類は愛称がないという。

 アジアゾウやニシゴリラといった人気動物は公募で決めるケースが多い。今いる動物で投票が最多だったのは2013年のチンパンジーの赤ちゃん。園が設けた四つの候補から選択する方法で行い、投票総数約4800票からニイニに決まった。出生日である2月12日の語呂合わせだ。

 別の園からやってきたマンドリルのベンケイとオネの子は「歴史上の人物」などにちなんだ選択肢で投票してもらい、ヨシツネ(源義経)やイズミ(和泉式部)になった。

 公募以外で愛称が付けられた動物も多い。飼育員に原則任せられ、食べ物が一大勢力を誇る。果物が主食のインドオオコウモリはスイカ、リンゴ、チェリーなど。50匹以上いて、子だくさんのテンジクネズミも料理や食材名が並び、3月に生まれた4匹はウイロウ、ヨウカン、ズンダモチにワラビモチ。別の兄弟グループはキノコ類などで、和田さんは「食材はバリエーション豊富でなじみがある。ネットで調べるなど名付けが大変なこともある」と苦笑する。

 セリやナデシコを含め野草の名が多いフンボルトペンギンは、以前の飼育員が自然観察指導員の肩書を持つほど植物に詳しかったから。また、母系社会のアカゲザルは母親の強さで群れでの順位が決まるため、パワーバランスを把握しやすいよう母親の名に関連付けることが多かったという。コロッケの子はテンプラ、ナナメの子はヨコといった具合だ。

 このほか、フサオマキザルは、他園から来たヨシコをアニメ「魔法使いサリー」のキャラクター名として捉え直し、子はトンキチ、カンタなどとした。

 愛称が広く付けられたのは1935(昭和10)年7月にさかのぼる。「動物名づけの会」が開かれ、カバやクマをはじめ約30頭に初めて名前が与えられた。当時の新聞によると、園長は「(愛称がないと)動物を取り扱ったり馴(な)らしたりするのに不便なばかりでなく、何となく親しみが出ない」としている。

 戦時中には敵性語を避けるため、インドゾウのカリヤニーを大東亜共栄圏にちなんで共栄号に、アミメキリンのワンジローを皇国号に改名したこともあった。

 人名と同じように、さまざまな由来や背景がある動物の愛称。和田さんは「それぞれの違いを知り、愛着を抱くきっかけになれば」と期待を込める。