米国のトランプ大統領が、議会で可決された歳出法案に署名するとともに、不法移民対策としてメキシコ国境に壁を建設するため、国家非常事態宣言を発令する方針を固めた。ホワイトハウスが明らかにした。

 歳出法案は、国境で不法移民の侵入を阻止する費用を、すでに計上している。

 大統領が署名すれば成立し、つなぎ予算の期限切れに伴う一部連邦政府機関の閉鎖は、回避される見通しだ。

 大統領は、何が気に入らなくて、非常事態を発令しようとしているのだろう。

 壁の建設を巡って、トランプ政権と野党の民主党は激しく対立してきた。

 予算が失効した昨年12月から、一部の連邦政府機関は史上最長の35日間にわたって閉鎖された。この間、当該の職員が無給となったほか、国民生活にも影響が出た。こうした事態を、繰り返してはならない。

 昨年の中間選挙で、議会の下院は民主党が多数を占めており、今回の歳出法案を成立させるには、政権の妥協が必要である。

 国境に全長約380キロの壁を建設する計画は、約90キロのフェンスを設置する事業に変わり、予算額は政権の要求していた57億ドルから、4分の1程度の13億ドル余りに抑えられた。

 大統領は、壁の建設を公約に掲げ、先の一般教書演説でも実現に意欲を示している。このままでは、中核的な支持者の離反を招くと考え、議会を通さずに予算執行できる非常事態宣言を発令するようだ。

 しかし、いったん歳出法案に署名した後に、修正するような行為は、筋が通っていない。

 米メディアによると、発令後に国防総省などの予算の一部を、壁の建設費に転用することが、検討されているという。

 非常事態とは、国家が運営の危機にひんすることである。想定されるのは、大規模災害や他国からの武力攻撃、内乱、暴動、テロ、疫病のまん延などだ。

 米国では、2001年の同時多発テロの際に出された。今、そのような状況にないのは明らかで、発令しても効力停止を求めて提訴されるのは避けられまい。

 予算を得るための議会対策として非常事態宣言を使うのは、権力の乱用と指摘されても仕方なかろう。大統領といえども、許されないはずだ。